政宗がモテることは昔から知っていた。だって、ずっと傍にいたから。好きな人のことだから。
そのおかげで何度か先輩や他の子から睨まれたり、イジメられそうになったりしたけど、いつも政宗が助けてくれてた。

───Princessのpinchを助けるのがprinceの役目だろ?

そう言って、笑顔で私の元へ来てくれる。
その言葉は私の気持ちを掻き乱すのに十分で。ちょこっとの優越感と、たくさんの疑問。
私は政宗の姫、だなんてなれない。不釣り合い過ぎる。

「あの子、可愛かったなー…。」

あの日見た光景を思い出してはため息ばかり。その度に自分のことが嫌になる。
政宗が女の子から告白されるなんて、今までも何度もあった。その度に胸は痛くて。
自分を守る為に、気にしないのが一番だと、そうするようにしていたのに。
勝手に想って、勝手に傷付いて。私は彼にとって“幼なじみ”であり、“恋愛対象”では無いことは分かりきっているのに。
それでも変わらず隣で笑ってくれる政宗に期待して。
つくづく自分の性格が嫌になる。
そんな事を一人で考えていたら、全然眠れなくて。カーテンの隙間から差し込む朝日が目に沁みた。

「学校…行きたくないなぁ…。」

今は寝不足でヒドい顔なことは簡単に分かる。こんな状態、政宗には絶対見せたくない。
目を閉じて布団を顔まで深く被っていたら、次第に近付いてくる誰かの足音が聞こえた。
兄さんかな、なんて思っていたのに。

「飛鳥、遅刻するぜ?」

聞こえた声に体は固まって動かなくなる。
反応しない私に業を煮やした彼は、私の被る布団へ手を掛ける。
ヤダ、お願い、見ないで。今、ヒドいから──────。
願いも虚しく布団は取られ、顔を覗き込まれる。

「……っ…!?」

刹那、彼の息を呑む小さな音。そしてそのまま手がそっと目尻をなぞった。
その手つきが優しくて、くすぐったくて、ゆっくりと目を開けば、目の前に政宗。

「政宗…おはよ……。」

小さく言えば「Good morning.」と笑って返してくれる。

「…目ェ腫れてる…。泣いたのか?」

辛そうな声で聞いてくる政宗に、「少しだけ。大丈夫だから、学校行こ?」と返せば、「No.」と否定の言葉。

「teacherや小十郎には適当に言っとくから、お前は今日は休め。」

額に手を当てられて、「熱はないな」と少し安心したように言われて、再び優しく布団が掛けられた。

「政宗。」
「ああ。」
「…ありがと…。」

隣に政宗がいる事に安心して。
手を伸ばせば握ってくれた。
昨日はあんなに寝れなかったのに、繋がった手から伝わるぽかぽかと気持ちいい体温に、次第に重くなっていく瞼。「そのまま寝ちまえ」と言う声に従って目を閉じる。
完全に意識を手放す前に、政宗の動く気配。
そして、おでこに何か暖かく柔らかいものが触れた気がした。

今ならゆっくり眠れる。



冬の早起きは苦手なんだ

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