今日の飛鳥は何かおかしい。 そう思って、彼女を問い詰めてみたけれど、明確な答えは貰えなかった。 どうしてそんなに目ェ真っ赤に腫らしてるんだよ───。 それがずっと気になっていて。 だからなのか。あの時咄嗟に言葉を掛けてやれなかった自分が憎い。 … 「政宗くん…付き合ってください!!」 「Ah…?」 人気も疎らな放課後の、突然の告白。普通なら嬉しいのだろうが、生憎とオレはそうじゃない。 この女も一般的に見れば美人な部類に入るのだろうが、興味のない女に言い寄られても幸せな感情が浮かぶはずが無く。 「悪いがオレはアンタに興味が無ェ。彼氏が欲しいなら他を当たってくれ。」 今オレの脳内を占めるのは、大切な幼なじみのアイツだけだ。 そう言って、目の前の女に背を向けた。 「まっ…待って!」 でもその女は食い下がってきて、背後からオレに抱きついてきた。 刹那。 オレの視界を横切る影。 顔もよく見えなかったけれど、何故かオレは無意識に叫んでいた。 「飛鳥っ!!」 オレの声に、一瞬ちらりとこちらを向いた顔は紛れもなく彼女。そのままどこかへ走り去った。 張り付く女を振り払い、消えた彼女を追いかける。すぐに追ったはずなのに、走りついた先は行き止まり。 「Shit!」 舌打ちを一つ。 そのままイライラとしながら教室へ帰れば、探していた彼女はそこにいた。 オレが入ってきたことは、教室のドアを開く音で気付いただろう。でも、彼女はこちらを見向きもしない。 「飛鳥…。」 声を掛けようと出したものは音にすらならない吐息。 オレのいる教室の入り口とは反対方向の、窓の外を眺める彼女の目からは一筋、涙が零れていた。 オレンジ色に光っていた [Back] |