アメリカ留学の話を伝えてみると、案の定。彼女に応援してると言われてショックを受ける自分がいた。 「政宗なら大丈夫だよ。」 飛鳥ならそう言うことくらい分かっていた。 だって、オレが彼女に抱く感情と、彼女がオレに抱く感情は全然別のものだから。 ずっと飛鳥の傍にいたオレが、彼女に恋愛対象として見られていないことくらい、分かっている。 それなのに行かないで、なんて言って引き留めてほしいだなんて。 純粋に応援してくれている飛鳥に罪悪感を感じて、思わず顔を背けた。 「今日言おうとしてたのって、これ?」 「ああ。」 「準備とかってもうしてるの?」 「大まかな部分はな。」 止めてくれ。頼む。 飛鳥が質問してくる度に、言葉が胸に突き刺さる。 オレの願いが聞き届けられたのか、偶然か、いや、偶然だろう。だけど、彼女の追求はそこで止まった。 それにひどく安心して、一息つく。 これ以上聞かれれば、きっと飛鳥に───。 「飛鳥は…。」 ──オレを引き留めないのか。 言いかけて止めた。 今、オレは何を口走ろうとしていた? 「私?進路なんてまだ迷ってるよ。」 彼女は勝手に動いた口から出たのが、自分の進路についての疑問だと解釈してくれた。 助かった。 「私も早く決めなきゃなー…。」 地元を離れるか離れないか、いっそ政宗について行くのもアリかな。 そう綺麗な笑みを称えながら言う飛鳥が、本当にアメリカまで一緒に来てくれたらどんなに嬉しいことか。 「まだtime upには遠い…自分にとってのbest answerをゆっくりと考えろよ。」 「そうだね。」 当たり障りのないことを言って、動揺を隠して。 自分の気持ちを奥に押し込んだ。 「今日は話してくれてありがとう、政宗。また明日ね。」 バイバイ、彼女は自宅の玄関の扉に手をかけて言う。 ただ、扉が閉まる瞬間、ほんの一瞬だけ。 飛鳥の笑顔が歪んでいて、目元が光ったように見えたんだ。 ああ、そんな顔もするんだ [Back] |