2人並んで歩く、川沿いの桜並木。今は散って葉桜だ。

「飛鳥。」
「何?」

いつもなら言いたいことははっきりと言う政宗なのに、今日はどこか歯切れが悪い。
こういう時は、大抵隠し事をしている時だ。幼い頃からずっと一緒に育ってきた。だから、このくらいは簡単に分かる。

「言いたくなってからで良いよ。」

無理に聞いたって仕方ない。はぐらかされるより、本当の事を言ってくれない方がずっと悲しいから。
そう思う私は政宗のことが好きなのだ。家族に、兄さんに感じる好きとは別に。そう自覚したのは随分と前のことだ。
でも、気持ちを伝えたことで今の関係が崩れるのが怖い私は伝えないまま、今の状況に甘んじている。
本当、私は狡いやつだ。

結局、政宗は最初に私の名前を呼んだっきり黙って、私も声を掛けずに家まで帰り着いた。

「あの、さ。」

だから、家に入ろうとした瞬間に政宗に呼び止められてびっくりしたんだ。

「どうしたの?」
「お前には…早く伝えとくべきだと思って、な。」

言いにくそうに、言葉を探しながらしゃべり出す政宗の声に集中する。

「オレは…日本の大学は受験せずに、アメリカに行く。」
「えっ…?」

戸惑う私に対して、彼は一度言葉にして大分気が楽になったのだろう。あれこれと計画を教えてくれるが、聞いた傍から言葉がするりと抜け落ちていく。

ただ、それでもはっきり分かったのは、今までと比べて確実に政宗は変わってきていること。
その変化は良いことなはずなのに、私は自分が彼に置いていかれる気がして、目の前が真っ暗になる感覚に襲われて。

「そっか…うん、応援してる。政宗ならきっと外国でも上手くやれるよ。」

そう言って無理に笑って自分の気持ちを誤魔化した。

本当は応援なんてする気が無いくせに。

嘘を並べる唇が、次第に乾いてきている気がして、舌を少しだけ出してぺろりと舐めた。



変わらないね、その癖

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