夜分遅く、酷く寒気を感じて目を覚ました。
何か嫌な夢を見た気もする。寝起きの頭は朧気で、内容ははっきりと思い出せない。

もぞり、と体を動かして体制を変える。
まだ夜明け前の、草木も眠るような時刻だ。もう一度眠ろう。

そう思い目を閉じるが、一度起きてしまったおかげで目は冴えてしまったようだ。なかなか眠気はやって来ない。

また体を動かす。
すると、隣で眠る皎月の姿が視界へ入った。

「皎月……。」

起こさないように、ゆっくりと手を伸ばす。
頬へ触れれば、その温かさが体に沁みた。

絆を掲げる豊臣の仇。奴が今の私を見れば、勘に触る笑顔で「三成も良い絆を持っているじゃないか」とでものたまうだろう。

そんな事を褥の中で考えるようになった私は、大分隣で眠る彼女に絆されたらしい。
そう刑部に言われたが、私は決して認めない。

「…みつ……な…り……さま…。」

寝息と共に、零れる私の名を呼ぶ声。口元は緩く笑みをたたえている。
全く、どのような夢を見ているのか。私の名を呼んだのだ。きっと、彼女の夢に私はいるのだろう。

それだけで、私の中はどこか満たされた気分になる。無論、仇である家康を討たねば到底この胸の内を全て満たす事は出来ないが。


それでも、彼女の中に私が少しでも存在していれば。

それで彼女が幸せというものを感じられるのであれば。

それだけでそこが私の存在する場と成り得るのだ。


わたしは此処にあるのだと

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