初恋は実らない、って誰かに聞いたことがある。
本当にその通りだなって思うよ。

「丁、あそぼ!」
「…名前さん。分かりました。」

見た目は私とそんなに変わらないのに、すごく大人な彼。
何もない原っぱで遊ぶ方法を教えてくれたり、大人顔負けの知識を教えてくれたり。

そんな彼が大好きだったのに。

「名前、もう丁とは遊んじゃ駄目よ。」
「あの子は親がいないのだから。」

そう言って家に閉じ込められた私は、二度と彼と遊ぶことはなかった。





初恋は実らない、とは実に言い得て妙です。
本当に実らなかったのですから。

「丁、丁。」
「なんですか。」

ニコニコと私の名前を繰り返し呼ぶ彼女。可愛らしい、の一言はこっそり私の胸の中に閉じ込めておきます。

彼女とずっと一緒に笑っていたい。そう思っていたのに。

「丁、もう私の娘に近付くな。」
「あの子は我が家の大事な跡取り娘なのだから。」

そう周りから言われて、彼女とおしゃべりするどころか、二度と会わせてもらえなかった。





人間嫌な予感ほどよく当たるものだ、全くその通りだよね。

「生贄の儀式をするからお前も見ていなさい。」

最近雨が降らずに日照り続き。これ以上被害を出さないために、雨乞いの人柱としてこの村の誰かが使われる。

父の指示で祭壇に連れてこられたのは、祭具で身を飾った彼。

どうして―――。

「丁っ!」
「此方へ来ては駄目ですよ。」

思わず彼に走り寄ろうとする私を止めたのは彼自身。

「笑ってください、名前さん。私の命と引き換えに、貴女が幸せになれるなら、それこそが私にとって一番の幸せとなるのです。」

そう言う彼は微かに笑っていた。





「お前を生贄にする。」

この村で行われる慣わしの一つである雨乞いの儀式は、人柱を立てて行うもの。

村人を贄にはしたくない。だから身寄りのない、死んでも誰も気にしない私が生贄として捧げられる。
まあ、よくある話だ。

私だって死ぬのは嫌だ。身寄りが無いからと生贄に選ばれたのも気に入らない。

でも、私の命一つで彼女の笑顔が見られるなら。
それなら喜んでこの身を差し出そう。
彼女以外の村人は、いずれ呪ってやる。





儀式が終わって三日間。私は自分の部屋に籠もって泣いた。
彼がいなくなったのが、辛くて寂しかった。

でも、彼が最後に言った言葉。
絶対に忘れないよ、丁。
私、ずっと笑っているから。
それがあなたの望みなら、どんなときも笑っているから。

だから、私が死んだらそっちに行くよ。
今度こそずっと一緒にいようね。


Broken Heart Spiral


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