かさり、と微かな音を立ててページを捲る。
さらさら、と筆を動かして書き留めた文字が乾いたら、その上から判子を押して書類の山へ。
そしてまた新しい書類へ手を伸ばす。

「名前さん、少し休憩しませんか。」

あ、ここ間違えてる。書いたのは…茄子君か。後で訂正してもらいに行こう。また唐瓜君がフォローするんだろうなあ、なんて。

「名前さん。」

こっちは大王様か鬼灯様の判子が必要かな。大王様は裁判の途中だろうから、鬼灯様は…。

「名前さん。」
「ほっ…鬼灯様っ!?」

書類から顔を上げれば目の前に、少しだけ眉をひそめた鬼灯様が。

「先ほどから呼んでいたのですが。」
「すみません…気付かなかったです…。」

仕事に集中し過ぎてた。集中し過ぎて周りが見えなくなるのは名前の悪い癖よ、ってお香にも言われてたのに。

「少し休憩しましょう。もう昼時も過ぎています。貴方、私が出勤するより先に仕事を始めていたでしょう。」
「あ…れ…本当だ。」

時計を見ると、針はお昼をとうに過ぎたところを指していた。

「全く…お昼は食べましたか?」
「…まだ、です。」

そういえば朝ご飯を食べてから、何も食べていなかったっけ。
そう言うと、鬼灯様はため息を一つ。

「仕事熱心なのは大いに結構ですが、時々は休憩も入れてください。倒れてしまえば元も子もないですよ。」

それは鬼灯様も同じじゃないのかな、って思っていたら、顔に出ていたのか「私の事はいいのです。」と言われた。

「ですが、名前さんのおかげで大分書類の山が片付きました。ありがとうございます。」

そう言って、頭を軽くぽんぽん、と撫でられた。
あれ?

「鬼灯様…。」

触れられたところがいつもより熱い。それと、ほっぺたも。
きっと顔が真っ赤になっているんだろうなあ。ああ、恥ずかしい。

でも、心なしか鬼灯様が満足そうだから良いのかな。


赤い実はじけた


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