「加ヶ知先生、さようなら。」
「さようなら。今日もお疲れさまでした。」

何でもない、ただの一生徒と先生の会話。自分が受け持っているクラスの生徒と廊下ですれ違っただけ。
でも、その会話すらも楽しんでいる自分がいることに気付いている。

現世視察の一環で潜入したのは女子校。女子だらけの環境で学んだことが衆合地獄の改善に役に立つと思って選んだその場所は、私にとって離れがたい場所となってしまった。
非常勤講師として三ヶ月。その契約でこの学校に来たのに、まだもう少しだけでいいからいたいと思ってしまう。

それもこれも今し方すれ違ったばかりの彼女のおかげだろう。

「全く…色恋事で頭を悩ます日が来るとは思いませんでしたよ…。」

本当、自分自身驚いている。

でも、この感情を今すぐにどうこうしようという気にはならなくて。
非常勤講師として勤務するあと一ヶ月間。その間に彼女が私に落ちるのもよし、落ちてこないのもよし。

「とりあえず…彼女が死んだら考えましょう。」

それまでは臨時講師の加ヶ知先生として彼女に接しよう。
優しくもなくまた厳しくもなく、彼女の記憶の片隅に残ればいいなというくらいの態度で彼女に接しよう。

ああ、彼女が地獄へ来る日が楽しみだ。

「その時は本気で、ね。」

自分のものにしようじゃないか。


禁断の果実


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