友達の友達は友達だ、なんていうけれど、実際はただの顔見知り程度だよな。
と言うよりも、そうであってほしい。

「あ。茄子のオトモダチ。」
「…なんだよ。」

仕事中にも関わらず、どこかに消えた茄子を探して賽の河原へ来てみれば、そこにいたのは探していた茄子はおらず。代わりに、とばかりにそこにいたのは茄子の友達の名前だった。
ノートを片手に、一心不乱に手を動かしている。何かをスケッチでもしているのだろうか。

彼女とは小学校が一緒だったらしいが、同じクラスになったことはなくて。でも、名前は絵が上手くていつも表彰されていた。だからだろうか。茄子と仲が良くて、「名前はオレの友達だよ」って言ってあちこち連れ回すから、名前と顔くらいは知っている…いわゆる顔見知りのような関係。
そんな俺ですら思うくらいにこいつは変わった奴で。
そうだな…茄子の女子バージョンみたいなものだろうか。

就職する際にも一般企業だったり獄卒だったりの入社試験は受けず、自分の得意な絵を生かして画家の道に進んだ彼女は、今では時々街中で絵を見かけるくらいの人気な絵描きの一人…というのを茄子から聞いた。

「君は何をしているの?」

普通の人なら今は勤務時間でしょう?

ノートから顔を上げずに聞かれて「茄子を探している」と言えば、こくりとうなずかれて。

「ああ、なるほど。」

絵描きなんて不規則な生活習慣を送る仕事をしていれば、中々みんなに会えなくて。
だから、今日は珍しい日。一日に二人も会ったから。

「二人…?」
「そう。」

君がここへ来るほんの五分ほど前に、茄子がここに来たよ。彼の上司にあたるらしい鬼と一緒に。

「マジかよ!?」

どっちに行ったと慌てて聞けば、「閻魔殿に帰るって君に会ったら伝えてほしいと頼まれた」と言われて。

もう少し早く言ってほしかった、なんて思いながら来た道を引き返そうと足を引けば、「待って」と名前に引き止められる。

「いってらっしゃい、唐瓜。」

驚いた。いつも「君」とか「茄子の友達」としか呼ばなかった彼女が名前を知っていたなんて。
でも、呼ばれて嫌じゃなかったから。

「…おう。」

ちょっとばかりの照れくささを抱えて、俺は彼女に背を向けた。



必然と偶然


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