「あれ…?」

この間買ったばかりの、お気に入りのマグカップが見当たらない。お仕事の合間の休憩の時に使おうと思って、閻魔殿の休憩室の隅の棚に置いていたのに。

「どうかしましたか?」
「あ、鬼灯様。マグカップが見当たらないんです。」

お茶でも飲もうと思ったのに。
どこか別の場所に仕舞ったのかなあ。
以前机の上にハンカチを忘れて帰った時も、次の日に無くしててショックだったのに。また無くなってたら嫌だなあ…。

あちらこちら、扉をぱたりぱたりと音を立てて探し回る。
さっき探した場所もまた見てみようかな。
そう思って、一番最初に探した扉に手を掛けた時だった。

「貴方が探しているのって、これですか。」

最初にどうしたのか尋ねられたっきり物音一つしないものだから、とっくにいないものだと思ってた。鬼灯様、仕事に戻ってらっしゃったのでは無いんですか、という疑問は頭からすっかり抜けて。

「それ…!」

鬼灯様が手にしていたのは、私がずっと探していたマグカップで。

「どこにあったんですか!?」

勢いよく見せられたそれに飛びついたのは許してほしい。

「いや、ちょっとしたコレクションで。」
「コレクション?」

不思議に思って不躾にもオウム返しに聞いてしまった。
すると、鬼灯様はこくりと頷いて。

「その金魚の柄が可愛らしかったので。」

ついつい持ち帰ってしまって。ああ、名前さんのだったんですね。あのハンカチも。

それを聞いて、腹が立った私が鬼灯様からマグカップをひったくってしまったのも無理はないと思う。

「犯人はお前か。」


敵は身内にあり


[Back]


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -