ふわり、とカーテンが風で揺れる。隙間から差す日の光がぽかぽかと暖かい。
極楽満月も今日はお休み。桃太郎君も地獄の元お供のみんなに会いに行っている。だから、白澤様と二人っきりでのんびりと過ごせる、そんなお昼時。

お気に入りのマグカップにお茶を淹れて、お気に入りの小説を持って、ソファーの上のお気に入りの場所に座る。
ゆっくりと本の表紙を開いて、栞を挟んでいたページへ。
数ページ捲ってお茶を飲んで、また数ページ捲って。

その動作をしばらく繰り返していると、ぎしりとソファーが軋んで。同時にそっと引き寄せられる感触。体が暖かくなった。

「名前ちゃーん。」

にこにこと笑みを浮かべて名前を呼ぶのは白澤様。
見ていると私まで嬉しくなるような、そんな優しい笑み。

「どうされたのですか?」
「んー?」

名前ちゃん充電ー。

なんて言って首筋に顔を押しつけてくる白澤様の髪がくすぐったい。
白澤様、くすぐったいですって言ってみると、ごめんごめんと顔が離れていった。

「ねえ名前ちゃん、これ見てみてよ。」

この間現世に行ったときに見つけたんだ。

そう言って白澤様が差し出してきたのは一冊の雑誌だった。意外と厚い。表紙にはカバーが掛かっていて、何の記事が載っているのかは分からない。

受け取ってまじまじと見ていると、早く開いてと彼が急かしてくる。
持っていた本に栞を挟んで、雑誌を膝に乗せて。表紙をゆっくりと開いた。

「…これ…。」

そこに載っていたのは真っ白なドレスにベールを被ったいわゆる花嫁さんの写真。
次のページも、その次のページも、色や形の違いはあれども全部花嫁さんの写真が並んでいた。

「名前ちゃんならどれも似合いそうだなって思ったら迷っちゃって。」

今度、2人で見に行こうよ。

そう天気の話をするみたいに自然に白澤様がおっしゃるものだから、ただ頷いて。
でも言葉の意味が分かった途端、顔が熱くなるのが分かった。

「名前ちゃん真っ赤。」
「…誰のせいだと…。」
「んー…僕のせい。」

白澤様はよしよしって頭を撫でてくれて、本当、可愛いよなんて耳元で囁いてくるものだから、やられっぱなしなのも悔しくて。

「そう言う白澤様こそ何を着ても似合いますよ。かっこいいですから。」

そう耳元で囁いてみた。
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