初めから、そう、初めから。
分かっていたことだったの。
それでも止められなかったのは、私の責であって、罪であって、乙女の心という不確かで、不純で、清らかなものであって。

「勝家様、そう持っていらしては花が枯れますよ。」
「…ああ。」

その花がかの人を想って飾られている事くらい、この方の部下である者ならば誰だって知っていた。
嘗て野望を抱いたが故に主から目を掛けられていた様から一転、軍内でも爪弾きに遭ったこの方はとても淋しい人だった。粛清を受けた後のこの方の部下変わり様は、当時を知る者ならば絶望を抱き、もう二度と戦場で1番の功績を挙げていたあの世界を見ることは叶わぬ事と悟るほど。それでも付き従うと決めここまで来たのは私自身の選択である。
だからこそ、この世の全てに何も望まぬ様になった生ける屍が如くのこの方が、ある時から大切になさっているその花にはすぐに気がついた。
何か有事があれば必ずその花に触れ、枯れればすぐに同じものを自ら用意する。
そう、その白い百合の花にかの方を重ねられていることくらい、知っていたのだ。

「先日京に向かった折に、切花が長持ちするという薬を手に入れましたので、どうぞその花瓶の中に入れましょう。また綺麗な姿を見せてくれますよ。」

勝家様が握られていて少し萎れてしまった花を受け取り、水切りをしてから薬を溶かし入れた花瓶に活け直す。
それを微かに頬を染めて見守られる勝家様の眼差しの何と優しいことか。

ああ、今、勝家様の目の前にはお市様がいらっしゃる。
幸せそうに微笑まれるお市様がいらっしゃるのだ。

そうして同時に私は幾度となく思うの。
勝家様を、明星を欲しいと叫ぶだけでは、犬畜生如きの手には届かないのだと。


紫苑で冠を作ったの


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