「狡い。」

久しぶりに会った、僕の大切な大切な女の子である名前。
あれ、前に女の子って言ったら、もうそんな年じゃないよって言われたっけ。でも、それ位大事な子。

それなのに、まるで僕が悪いことをしたと言わんばかりの言い様。
会って数分で可愛らしい頬を膨らませて文句を言われるなんて、そんなことした覚えは無いんだけれど。

「何がだい?」

不機嫌な彼女を抱き寄せて、サラサラした綺麗な前髪に指を絡ませて、ゆっくりと頭を撫でながら聞いた。

「半兵衛ばっかり、狡い。こうやってすぐに私を甘やかして。」

なんだ、そんなことで怒ってたんだ。

「そんなことって…私にとっては大事なことだよ!」
「はいはい。」

もう…!と、再び開きかけた唇にそっと僕のを寄せれば、羞恥で顔を真っ赤に染めて、僕の胸元に埋めてくる。
そんな生娘みたいな反応が愛しくて、何度か繰り返した。

「はっ…離して半兵衛…っ!」
「駄目。名前と会えなかった間僕がどれだけ辛かったか、君は知っているかい?」

腕に力を込めて、彼女が逃れられないようにする。
すると、いつもはこのあたりで弱くなるはずの彼女の抵抗が逆に強くなって。
不思議に思いながら、力を込めた腕を緩めた。

「どうしたんだい?今日はいつもらしくないじゃないか。」

そう問うと、緩い拘束の中からするりと抜け出して、俯いたまま名前は口を開いた。

「いつも半兵衛は私を甘やかしてばっかりで……そんなの…私…半兵衛に何もお返しできてな…。」

言い終える前に名前の頬を両手で包みこんで、言葉を僕の口で吸い取って。
それに驚いて口を噤んだ彼女はとても可愛い。

再び彼女を引き寄せた僕は、彼女が発した僅かな抵抗も何もかも包み込んだ。

「馬鹿だね、名前は。僕が君を甘やかすのは、僕から君へのお返しなのに。」

君が気付かないだけで、いつも僕ばかり君から沢山のものを貰っているのに。
どんなことがあっても、名前が笑って僕のことを待っていてくれているだけで十分、僕は頑張れるんだよ。

「君が笑ってくれているだけで、僕は十分なんだよ。」

なんて僕の気持ちを全部込めてみたり、ね。


「馬鹿だね」と言って


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