ふと目が覚めて、時計を見ると短針は8のところを指していた。 いつもなら遅刻確定だなんて騒ぐ時間。だけど、今日は休日の日曜日だ。 「…起きよっかな…。」 二度寝しても良かったかもしれない。でもそんな気分にはなれなくて、隣で寝ている家康を起こさないように注意しながらベッドを抜け出した。 … 「んー…気持ちいい…。」 リビングのカーテンを開けて朝日を取り込む。ぽかぽかと暖かい。 欠伸をかみ殺しながらソファーへ移動して、近くにあったテレビのリモコンを何気なく手にとってボタンを押した。 重々しい音楽と共に画面に映し出されたのは何かの怪物。 そういえば、日曜日のこの時間帯は特撮もののヒーロー番組が放送されていたっけ。 チャンネルを替える気も起きず、ソファーの上でクッションを抱えてボーっと眺めていた。 怪物が街で暴れ出して、そこから逃げ惑う人々。 逃げる大人にぶつかって、転んでしまった男の子に怪物の魔の手が伸びる。 そこで男の子が叫んだ。 “助けて、ヒーロー!” その声に反応して、1人の青年が現れる。どこからともなくベルトを取り出して、変身。 その流れるような一連の動きをする役者さんが格好良くて、ぽつりと。 「この人、格好いいなー。」 「ワシよりもか?」 頭上から降ってくる声に驚いて、振り返ろうとした瞬間に後ろから手が伸びてくる。そしてそのまま私の前で交差した腕によって私はすっかり捕らわれてしまった。 「せっかくの日曜日なのに朝から浮気をされるなんてな…。」 「浮気なんてしてないよ。する暇なんて与えないクセに。」 くすくすと笑えば、頭の上からも笑い声が響く。 「確かにそうだな。」 そうやってひとしきり笑った後、私はくるりと体を回して彼に向き合う。 「それにね、もう私にはヒーローがいるもん。」 「名前専用のか?」 「そう、私専用の。」 いつもは誰にでも優しいけどね、私がピンチの時は他を擲ってでも駆けつけてくれるヒーローがいるもん。と、心の中で続けた。 「そうか、それは頼もしいな。」 なんて言って笑う彼の唇にキスを一つ。 「だから、絶対守ってね。」 ヒーロー・ヒーロー [Back] |