道場の方から楽しそうな声が聞こえる。
あぁ、この声は名前と旦那だなって思って。
少しだけ開かれていた扉から覗けば今日もまた光る、俺様の大事な彼女の名前の笑顔。
どうやら旦那の鍛錬に付き合っていたようだ。俺が来たのと同時に鍛錬が終わったらしい旦那は、得物を持って井戸の方へ駆けていった。

「名前、お疲れ。」
「幸村さまの相手はなかなか体が保ちませんよ。次からは隊長がやってくださいね。」
「えー俺様も勘弁して。」

そう笑いながら、道場の後片付けをする。
同じ真田の、同じ忍とは思えないくらいにコイツの笑顔はキラキラ光って眩しい。
太陽みたいだと、いつか言ったら。

「じゃあ隊長は月ですね。月があるから太陽があって、太陽があるから月がありますから。」

なんて可愛いこと言ってくれて。それが嬉しくて。

その嬉しいの気持ちをありったけ込めて抱きしめれば、恥ずかしそうにしながらも抱きしめ返してくれた。

「お前ちゃんと飯食べてんの?また細くなった?」

その華奢な身体に手を回せば、硝子細工みたいに壊れそう。

俺とは異なる、綺麗な漆黒の長い髪に顔を埋めれば、彼女のいい香りがする。コイツをこうやって抱きしめることができるのは、俺様だけの特権。

「佐助隊長、くすぐったいですよ。」

そう言って名前は身をよじるけどお構いなし。

「一番はやっぱり旦那だから二番目になっちゃうけど…名前、お前のことは俺が一生護るから。」

耳元で囁けば、分かってますって頷く。

「その代わり、隊長のことは私に一番に護らせてくださいね。」

そう言うコイツは俺の好きな、硝子みたいに光って眩しい笑顔を浮かべるから。
だから、俺はコイツのキラキラした硝子みたいな笑顔を護りたいんだ。


硝子の器


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