「あ゛ーづーい゛ーっ!!」

そう言って服の端を摘んでパタパタと扇ぐ名前。

「こら名前、女の子なんだからそんなカッコしないの。」

冷たいフローリングの上に足を広げて座り込む彼女へ注意する。
加えて、現在の季節は夏。必然的に肌の露出度は上がるもの。おかげで先程から、俺の理性を刺激するようなものが視界の端に消えたり映ったり。

「佐助ーっ!この暑さ、どうにかしてよー!」
「いやいやいや、流石に無理だから。」

そう言ったら、「オカン属性のクセに」と舌打ちされた。
ねぇ、意味わかんないから。

「地球温暖化のバカヤロー!!」
「そんな汚い言葉使わないの!」

ずっとこんな調子だ。暑い暑いと騒ぐなら、自分の家に帰ればいいのに、何故か彼女はそうしない。
夏の初めには真田の旦那にクーラーを壊されて、今は名前に騒がれて。俺様は単なる被害者だ。

「背中に汗が伝うのが分かるよー。」

呟きながら名前は服を半分くらい捲り上げた。
白い肌に見えそうで見えない下着。流石に理性も限界だ。

「さっ…佐助!?」

不意打ちで彼女の手首を掴んで引いて、抱き締めて。驚く名前をそのまま押し倒した。

「名前ってバカなの?それともワザと?」
「いや…何が?それよりこの体制はどういうことなの佐助?」

首を傾げる名前に呆れつつ、彼女の耳許に顔を近付けて、息を吹き込むように囁いた。

「天然な赤ずきんちゃんは賢い狼さんに食べられてしまいました。」

するとようやく分かったのか、顔を真っ赤にさせて「バカ!」って殴られた。痛い。


赤ずきんと狼


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