「慶ちゃん。」
「何だい?」
「…呼んだだけ。」

そう言ってクスクスと笑う君は、俺の気持ちなんて何一つ知らないんだろうな、なんて。

名前との何気ない会話は俺にとって一番の癒やし。彼女と話していれば、今が戦の世の中だなんて思えない位に穏やかな気持ちになる。

でも、さ。

「あ、兼続くんだ。」

ほら、そうやって。
君の口から俺以外の男の名前が出てくるだけでいい気分が一変するんだ。

「…慶ちゃん…けーじ……慶次?」

俺が多分、暗い顔していたからかな。名前が呼び掛けてくる。

「名前。」

だからね、首を傾げてキョトンとしている君に今日は言ってみようと思うんだ。

「なあ名前。もし、さ。もし俺がお前のことが好きで好きで堪らなくって、お前が俺以外の男の名前を呼ぶのが気に食わないって言ったらどうする?」

君は俺を愚かな男だと笑うだろうか。なんてね。

俺の言葉の意味を考えているんだろう。眉間にシワを寄せて、唸っている君にもう一押し。

「顔上げて。」

素直に顔を上げた彼女と目が合う。

「いくら風来坊って言ってる俺だって、自分の気持ちはどっしりと一所に固まってるんだぜ?」

ニヤリと笑えばほら。
君の顔は林檎みたいに真っ赤に染まった。


例えば僕が


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