「あ。」 隣でぼんやりと空を見上げていた名前が小さく声を漏らした。 「どうした?…ああ、天気雨か。」 雲一つなく晴れているのに、空からぽつりと雨粒が落ちる。 決して雨足が強い訳では無いけど、ポタポタと落ちてくるそれは。 「空が泣いているみたい。」 どうやら彼女も同じような事を考えていたらしい。 「そうだな。」 涙雨なんて言うくらいだからな、なんて心の中で呟いた。 「琉球の辺りだとね、太陽雨って言ったりもするんだって。」 「晴れている…太陽が照っているのに雨が降るからか?」 「そう。」 ――太陽だって泣きたいとき位あるよね。 そう言ってくるりと此方を向いた彼女が、たった一言。 「だから、家康も泣いて良いんだよ。」 ドクリと、心の臓が大きく音をたてた。 ああ、せっかく周りに悟られないようにしていたのに。己の夢のために絆を説く一方で、奴の絆を悉く奪う結果を招いた、ワシに涙を流す資格なんて無いと、そう自身に言い聞かせてきたのに。 「いくらみんなを見守る太陽でもね、抱え込み過ぎると爆発しちゃうよ。」 だから、たまには吐き出さないと。 彼女の言葉が途切れる寸前、膝に添えていた手の甲に落ちた雫が、きらりと虹色に光った。 ドロップ [Back] |