「家康!覚悟ぉぉぉおお!!」

そう言い繰り出した回し蹴りは、片腕でいとも簡単に止められる。

「はははっ名前、また腕を上げたな。」

笑いながらそう言う家康に舌打ちをして、名前はくるりと向きを変えて自分の教室へと走った。

またやってしまった。
これで一体何度目か。

教室についた途端、親友の鶴姫に泣きつく。

「もう…名前ちゃんも困ったものですね。」
「何故すぐに手を出す。」

偶然にも、近くにいたもう1人の親友のかすがにまで言われてしまう。

「だって…恥ずかしいんだもん。」

そう顔を赤くしながら答える名前の頭をかすがは小突いた。

「痛っ!?」
「名前、いつまでも恥ずかしい等と言っていれば徳川は誰かに取られるぞ。」
「そうですよ!せっかく幼なじみなんですから!」

真剣な目で名前を見据える2人。その剣幕に押され、名前はこくりと頷く。
すると、それを見た鶴姫はパッと明るく笑い、こう言った。

「名前ちゃんも少しは女の子らしくしましょうか。」





鏡の前に立ってから数分後。名前は鏡に映る自分の姿に絶句した。

「これでバッチリですよ!」
「大分変わったな。」

ニコリと笑う鶴姫。
彼女とかすがのアドバイスによって名前の見た目は大幅に変更されていた。

腕捲りされているシャツの袖を下ろし、いつも腰に巻いているジャケットを着て、背中に垂らすだけだった長い髪を緩く結ぶ。スカート丈もいつもより短めだ。

「こんなん私じゃない!?」
「その喋り方も直しましょう!」

名前を女子らしくしようという使命に駆られた鶴姫はさながら鬼コーチだ。

「これで家康さんの前に行きましょう!」
「無理無理無理無理無理!!」

全力で顔の前で手を振り、アピールするも笑顔の鶴姫に加担しているかすがによってトイレから引きずり出される。

「あっ。」
「噂をすれば、だな。」

どんなタイミングの良さだと名前がつっこむ間もなく、鶴姫が家康に話しかける。

「鶴姫じゃないか。どうしたんだ?」

そう言ってこちらへ近付いてくる家康。

「名前ちゃんをイメージチェンジしてみましょう☆計画です!」

と、鶴姫は緊張で震える名前を家康の前に立たせた。

「家康…どっ…どうかな…?」

名前は恐る恐る家康を見上げる。

「……。」

目を見開き、顔に浮かべていた笑顔を消し去る家康。
暫し沈黙が2人を包む。

「家康…?」

名前が再びそう話しかけた時だった。
急にぐいと腕を引かれ、気付けば名前は家康の腕の中にいた。

「ちょっ…家康!?」

突然のことに慌てる名前。すると、家康は更に腕に力を込める。

「名前…可愛らしいな。」

そう耳元で囁かれ、顔を赤くし、名前の体から力が抜けた。
しばらくの間、その状態で立ち尽くす2人。
そして家康は名前から体を離し、笑顔で言った。

「これからは毎日その格好でいてくれないか?」
「バッ…バカ!!」

そう言うも名前は心の中で毎日頑張ってみようと決意したのだった。


ちぇんじ☆


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