彼女がいなくなってから、彼の世界は色を失った。

「名前っ!名前っ!名前っ!!」

そうやって毎晩夢の中で彼女の影を見ては叫び、掴もうとする。

「三成よ…。」

刑部がいくら声をかけても三成の耳には届かない。

「名前…何故私を残して往ったのだ…。」

毎日毎日彼女の墓前に花を手向ける。彼女の大好きだった桔梗の花を。

「貴様がいなければ…私は何の為に戦ったのかが分からぬ…。」

そう言っては生前彼女が使っていた物達を抱きしめる。そして彼女と出会った日のことを思い出すのだ。

『三成!秀吉様や半兵衛様はもういないの!!今はあなたが豊臣軍の大将なのよ!大将のあなたがそんな状態でどうするの!?』

初対面な筈なのに、いきなり叱った彼女。その時の言葉が無ければ、三成は完全に家康への復讐心にのみ捕らわれていただろう。

「名前…。」

約束した筈だった。この戦、絶対にどちらも死なないと。そして、戦が終わったら祝言を挙げようと。
なのに…―――――。

『三成…負けないで…。…また昔のあなたに戻っては駄目…。前を向いて…私の分まで生きて…。』

そう言って事切れた彼女の亡骸を抱えた。

「…名前…私は貴様がおらなければ、何も出来ないのだな…。」

今日も三成は空を見上げて声を上げて嗤う。


世界よ嗤え


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