「なぁ名前…満月だ…。」

そう言う政宗に名前は悲しそうに微笑んだ。

時は現代。平和な日の本に突如として独眼竜、伊達政宗が現れたのは今から1ヶ月程前のことである。
蒼い甲冑を身に纏い、腰に6本もの刀を差した彼曰わく、満月を見ながら酒を飲んでいたらいつの間にか現代へと来ていたらしい。
そうして道端に倒れていた彼を介抱した名前と2人で弾き出した答えは、


“次の満月になれば元の時代へと帰れるかもしれない”


である。それから丁度1ヶ月…―今日が満月だ。

「政宗…良かったね。元の時代に帰れるかもしれなくて。」

名前は精一杯の笑顔を向ける。

「名前…。」

政宗はそんな彼女の両頬を自分の両手で包み込んだ。

「今までThanks.お前にはたくさん世話になったな。」
「私が好きでやったことだから、気にしないで。」

そう笑う名前の両目には自然と涙が溜まる。

「…オレがこの時代の人間だったら…名前にこんな悲しい思いをさせなくて済んだかも知れねぇのに…。」

彼女の涙を掬い政宗は呟く。

「もし…政宗がこの時代の人間だったら…私は政宗に出逢えなかったかもしれないよ。だから私は政宗が戦国時代の人で良かったって思えるようになるから…。」

と、最後まで言い終わらない内に名前からは涙が溢れ出した。
それと同時に政宗の体を淡い光が包み始める。

「Time out.サヨナラだ…。」

だから泣くなよと政宗は名前を抱き締める。

「政…宗ぇ…。」
「名前…。」

今までありがとうなと政宗は笑い、名前の唇へ己のをあてる。
何度も何度も角度を変えて。互いの体に熱が残るように。

「政宗…。」

名前が名を呼んだ刹那。淡い光が一際強く光を放ち、名前の唇から熱が消えた。

「さよなら…政宗。元気でね…。」

そう名前は呟き空に浮かぶ満月へ微笑んだ。


夢を見てました


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