「Ah…これは一体どういうことだ?」

政宗は己の部屋を見て呟いた。
―今日は休日。しかし、仕事で呼ばれた政宗は朝早くから会社にいた。ようやく帰宅出来たのはお昼過ぎ。せっかくの休日も半日が過ぎた頃だった。

「名前には悪いことしたな…。」

車を走らせながら政宗は1人後悔する。

久しぶりに互いの休みが重なったおかげでデートにでも行こうと彼女と約束していたのだが、その約束を守れなかった悔しさで己の唇の端を噛んだ。

「流石に名前も怒ってるよな…。」

そうため息を吐いてマンションの自分の部屋の扉を開ける。女物の靴が置いてあるのが目に入り、彼女が来ていることを知った。

「名前…?」

恐る恐るソファーにいるであろう彼女に声を掛ける。ソファーは名前の定位置だからだ。
だが返事は聞こえず、代わりに小さな寝息が聞こえた。

「寝てるのか。」

その可愛らしい名前の寝顔を見て、政宗は愛しさがこみ上げてくると同時に後悔の念に苛まれた。

「Ah…?」

名前に視線を落とすと、何かを握り締めている。ふとそれが気になり、政宗は彼女の手をじっくりと見つめた。

「Oh…?」

その途端、政宗は体中が疑問符でいっぱいになった。
彼女が握り締めていたものとは、金色の小さなハート型のロケットだった。
今まで彼女がそんなものを持っているのを見たことはなかった。物珍しそうに政宗がそのロケットを取ろうとした時だった。

「ん…。」

寝ていた彼女が身じろぎ、目を覚ます。

「名前…good morning.」

そう言ってロケットから手を遠ざけ、彼女の額にキスを落とす。

「ん…政宗…?おはよ…。」

寝起きで焦点の合わない名前はそのままふらりと政宗の胸元へ倒れ込む。そのまま名前は政宗の背中へ腕を回し、嬉しそうに微笑んだ。

「おかえり政宗…やっと捕まえた。」
「名前…。」

ぐりぐりと胸元に顔を押し付ける名前の頭を撫でながら、政宗は短く「sorry」と呟く。そんな政宗に名前は怒ってないよと言った。そして、政宗が先程から気にしていたロケットの蓋を開けた。

「来てみたら政宗がいなくて……代わりにメールが届いてて。一緒にいる日だって言ってたのにいれなくなって…。夢の中なら政宗と一緒にいれるかなって思って。」

それを見た途端、政宗は目を見開き、嬉しそうに顔を綻ばせた。
彼女が大切そうに握り締めていたロケットの中には、寝ている政宗の写真が入っていた。


Good night have a nice dream.


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