「阿部ー!一緒に飯食おうぜー!」
「うるせえクソレ」
「ひど!」
「ほんと阿部くんひどーい」
「竹本…」

わたしも一緒に食べていーい?と阿部の隣に腰かけると水谷は優しい笑顔で勿論と答えてくれた。

「竹本の弁当おいしそうだねえー!」
「そ、そうかな」

水谷がわたしのお弁当を覗く、自然と近くなる距離に少し顔が火照った。
そんなわたしを知ってか知らずか阿部は唐揚げもらうぞとわたしの大好物を箸でひょいとつまむと口へ放り込む。


「あーべぇええ!おのれはあー!」
「お前の唐揚げだけは旨いって認めてやるよ」


ふるふるとなくなった唐揚げを見てから阿部を睨み付けるともぐもぐと口を動かしながらわたしをちらっと見て笑った。
毎回そうだ、わたしが何かに対してうかれていると阿部は戻ってこいと言わんばかりに必ず意地悪をする。

嫌いとまではいかないがわたしの天敵とでもいっておこう。

「ははっ!お前らほんと仲良いなあ!」
「ち、違うよ水谷!こんなの仲良くないよ!」
「そうかあ?」
「そうしかない!」

やだ!誤解されたくない!
必死に訴えるとそこまでいうかあ、と笑いながら後ろを指差した。

「あ、」
「こんなのってなんだよ」

むすっとした顔の阿部が睨んでる。こわい。
さすがに言い過ぎたし謝ろうかなと思ったとき既に遅し、ほっぺたをぐにーっと引っ張られた。

「い、いっひゃああい!」
「あー?聞こえねーなー!」

阿部の手をバンバン叩くとやっと離してくれた。

「っ!水谷ならこんなことしない!」
「へ?俺?」
「あ、ちがっ、水谷は優しいから阿部みたいに乱暴しないよねって意味で!」
「ばーか」

あたふたとしながら弁解すると隣で阿部がぼそっと呟いた。

「水谷ー泉が呼んでるぞー」

学食から帰ってきた花井が隣にいる泉を指差す。
なんだろーと言いながら立ち上がって泉の方へ行く水谷とすれ違いで帰ってきた花井が水谷の座っていた椅子に腰かける。

「よーまだ食ってたのかお前ら」
「ああ」
「お、竹本の弁当うまそうだな」
「……」
「竹本?」
「あーこいつ水谷いないとき頭花畑行ってるから」
「は?」

水谷何の話してんだろう…。
泉と楽しそうに話してる水谷の顔、キラキラしてる。
やっぱ好きだなあ…と呆けているとほっぺに激痛が走った。

「いっ!?」
「いつまでも花畑で遊んでないで飯食わねーと昼休み終わんぞ」

そういって阿部はわたしのほっぺたから手を離した。
花畑ってどういう意味よ…。
意味わかんない事言ってる阿部を見ても答えは返ってきそうにないし、わたしは残りのお弁当を口に運んだ。


わたしの好きな人
(ただいまあー)
(お、おかえり!)
(あー…なるほどな)
(……)


⌒⌒⌒⌒
始まりました夏色花火!
どうぞ生暖かい目で見てやって下さい!
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