「うーん・・・」
「ただいまァー」


キッチンとにらめっこする事はや30分、ガチャリとドアが開く音がして振り向けば大学から帰ってきたりおがへなへなとソファにもたれ掛かっていた。


「おかえり」
「うぅ、疲れたーお帰りのちゅーしてェ」
「ばか」


ソファにいたと思ったらいつの間にかあたしの腰にぴとっとくっついているりおにでこぴんして再びキッチンに向き直る。


「ちゅーしてくんないと疲れとれないよォ」
「無理、今晩御飯何にするかで頭いっぱいだから」
「えーそんなのハンバーグで良いじゃん」
「…昨日食べたでしょ」
「じゃあじゃあエビフライ!」
「一昨日食べた」
「むー…」


あたしが悩んでたはずなのにいつの間にりおまでも隣に立って何が良いか悩んでる始末。


「!そうだ!オムレツ食べたい!」
「オムレツ?」
「ウン!」
「別に良いけど…あたし作り方知らないよ?」
「じゃあオレが作るー」


腕まくりして任せてよォ!と笑うりおに一抹の不安が過ぎったけれどとりあえず任せる事にしてあたしはソファに座った。

そして数分後、聞こえてきた爆発音に驚いて飛び上がるとりおが黄身だらけになって笑っていた。


「何した」
「ふんわり卵作ろーと思ったんだけどォ…」


失敗しちゃったァーと笑うりおをよそに視線を少しずらすと中が酷い有様になった電子レンジと卵。
お約束やってくれるよ、この男は。


「もう良い、あたしが料理本見て作るから」
「うぇ…ゴメン」


泣きそうな顔のりおの頭をぽんと叩いて卵を取り出そうと冷蔵庫を開けるとそこにある筈のものは忽然と姿を消していて。(さっきのが最後だったのか)
仕方ない買いに行くか、と財布を持って玄関に向かうとりおが突然飛びついてきた。


「ちょ、な、何!?」
「ゴメン、ごめんなさい!」
「は?」
「オレ何でもするから出てかないでェ!」
「りお何言って」
「オレ一人になったら生きてけないー!」
「り」
「好き!愛してる!神サマに誓っても良い!てかもう誓った!」
「落ち着けばか!!」
「だっ!?」

一人で何か誤解しているりおの頭をバシンと叩いて落ち着かせる。
涙目のりおに話を聞くとどうやら料理も出来ない自分に幻滅して家を出てくと思ったらしい。


「あのねりお、あたし切れた卵買いに行こうとしてただけなんだけど」
「へ?」


ほら、と財布を見せるとぶわっと貯まってた涙をボロボロながして良かったァーと座り込んでしまった。


「もう、りおってばおばかさんだねー」
「だ、だってェ」


未だひっくひっくと嗚咽を繰り返すりおの頭を撫でてやる。
そんな事であたしが愛想尽かす訳ないのに、何て思いながらもそこまであたしに依存しているりおを愛しいと思ってしまう。

「りお」
「ん?」
「買い物、一緒に行く?」
「!」

ぱあっと顔を輝かせたりおに微笑むと立ち上がって手を差し延べた。


「さ、行くよ」
「ウンッ!」



マイヘタレダーリン
(ところでオムレツって卵とケチャップ以外何必要なんだろ?)
(んー愛?)
(ばか)



⌒⌒⌒
120730
料理作るだけなのにここまで発展するのすごい