「あわわわー!遅刻するー!」 


どたばたと支度をして玄関に向かうとお母さんが勇人君もうきてるわよーってにこにこ笑って最後の仕上げに帯を直してくれた。

「変じゃないよね!髪の毛大丈夫?化粧崩れてない!?」
 
大丈夫大丈夫とわたしの興奮気味に気後れしつつも可愛いくなってるからいってらっしゃいと言われドアの前でふうーっと息を整える。

ガチャ、と外にでると携帯から顔を上げた勇人と視線が交わった。


(わ、勇人甚平だ…)


かっこいーっとまじまじ見つめていると勇人もわたしを見て固まっていて、ど、どうしよう浴衣の色変だったかな!?髪型!?それとも化粧がうまくのらなかったとか!?
もう二十歳なのにこんなどぎまぎしておかしいくらいに心臓がばくばくしてる。


「か、可愛い…」
「へえ!?」
「あ!や!な、なんでもない!あははー…」


真っ赤になって道はこのコースでいーかなーと慌てて携帯に目をやる勇人に顔に熱が集まる。
か、かわいいって、可愛いっていってくれた、よね今…!
よっしゃーっと内心でガッツポーズするわたしに勇人はそろそろ行こうか、と自転車の後ろに座るように促した。

「ちょっと待って、今ハンカチしくから」
「えっ」
「流石に直は痛いでしょ」

にこっと笑ってポケットからハンカチを出して折りたたんでしくとこれでよし、とわたしに合図をくれた。

こういうところも勇人の魅力の一つだと思う。
さりげない優しさにありがとうというと甚平を控えめに掴んだけれど何故か自転車はぴくりとも動かない。 


「あー…のさ」 
「?」
「結構スピード出すからその、」


視線をさまよわせながら控えめにいったと思ったらわたしの掴んでいる手をそっと握って腰に回した。


「こっちの方が安全でしょ」


かあーっと2人して赤くなって、わたしは小さくうん、としか答えられなかった。

ゆっくりと動き出した自転車。

勇人の背中…広いな、高校時代から変わってないと思ってたけどすごくたくましくなってる。
背中に頭を預けると少し早めの心音が耳に心地いい。

これから向かう場所ではもう始まったらしく遠くで光がうちあがって夜空を照らし始めていた。  



crush on you
( 君に恋してる )
(今も昔も)


⌒⌒⌒⌒
130705
突発的に思い浮かんだので書いてみました…ううむ、リハビリが必要ですね\(^o^)/