すき、ってことばは、何の為にあるのだろう?愛を伝える為?カップルのマンネリを防ぐ為?それは何度考えても分からなくて、あたしは隣に居る泉に聞いてみるけど、返ってくる答えは決まって分かんねー、と少しは考えてくれたっていいじゃないのにね、何て思うけれど、それが泉なのだからしょうがない。
そもそもさ、あたしと泉も付き合って1年位たつけどすきとか告白の時以外聞いた事がない。別に言われなくたって泉の気持ちはちゃんと分かってるつもりだし、泉にだってあたしのこの抑え切れないほどの愛は伝わってるはず。だからすき、って言葉は特に必要ないのかもしれないけれど、あたしはそこで歩く足を立ち止める。
「こーすけってさ、」
「あ?」
「あんま愛情表現しないよね」
「は?いきなり何だよ」
「別にー、只ふと思っただけ」
「ふーん」
再び先を歩く泉に、あたしは少し寂しい気持ちになる。あたしの事、泉は本当に思ってくれているんだろうか、何て、そんなの聞かなくたって分かってるはずなのにどうしようもなく不安になってしまう。
先を歩く泉の背中を見つめながら途方にくれているあたしに気づいたのか、歩く足を止めてこっちを振り返った泉に、あたしは再びあの疑問の意味を考えた。けれど、それは戻ってきた泉によって掻き消されて、
「すき」
「へ?」
その口から出た言葉にあたしは目を丸くする。
ついでに繋がれた手にも熱がこもって、あたしの顔は熱くなった。
「俺、そーゆーのあんま言わねーけどさ、」
「うん」
「そんな言葉、必要ないじゃん、俺達には」
ぎゅ、と握られた手にあたしのさっきまであった不安はふっと消えて、変わりに溢れてきたのは暖かい幸せな気持ち。なんだ、泉ってば中々粋なことしてくれるじゃない。小さく微笑むあたしを見た泉はそれから頭を少しかいて、あー、と言葉を濁した。
「でももし言葉にするんなら」
「ん?」
「すきっつーより、愛してる」
それは魔法のことば
(どんな魔法よりも強力な、)
⌒⌒⌒
120813
更新停滞中すいませんorz