ああ熱い。
頭の奥からじわじわと熱いものが込み上げてきて、額には汗が浮かび背中はじっとりと湿っている。
いつもよりだいぶおかしい体を起こそうとしたら額に冷たくて気持ちいい感触。
視線を移せば勇人がいて、起きたら駄目だよって苦笑いしていた。

「ゆ、と?」
「うん、起きた?」
「うん、わたし…」
「熱出して倒れたんだよ」

無茶してたんだねってまた苦笑いする勇人に、こんな顔させてる自分にずしっと罪悪感が浮かぶ。
最近練習きつかったからマネ業も頑張らなきゃって思ってたんだけどな、勇人に申し訳なくて俯くと額に当たっていた手が頭に置かれた。

「もっと俺に頼ってよ」

今度は、優しい、わたしの大好きな、あったかい笑顔でぽんぽんと頭を撫でられて、なんだか安心する。

「風邪引くと心ぼそくなるんだよね」
「え?」

小さく囁いた言葉に勇人は目を丸くする。
普段のわたしからは想像できないだろうな、こんな姿。
阿部や泉に見られたら何て言われるだろう。
だけど今は、今だけはこの熱に、目の前の彼に甘えよう。

「勇人、一緒にいて?」
「…いいよ」

少しの沈黙の後にっこりと笑う勇人に心に落ちていた不安がそっと取り除かれる。
それからゆっくりとした動きで勇人はわたしの頬に手を添えるとそっとキスをした。
いつもならびっくりして拒絶しちゃうんだけど今のわたしは熱に侵されてるから、目をつむって勇人の唇をむかえいれる。

離れるのが寂しいと感じられる時の中ゆっくり唇を離す勇人に小さく笑う。

「風邪、移っちゃうよ?」

悪戯に笑うわたしに勇人はふんわりと笑って

「移してよ」

再び口づけを落とした。



熱帯夜
(そしたら今度は看病してね)
(いいよ)



⌒⌒⌒
120802
熱帯夜・・・←