花火しよーよ!と水谷くんがやってきたのは放課後の事だった。
その時教室に残っていたのは今日日直の浜田くんとわたし、それと田島くんとはしゃいでいた泉くん。

「あれー三橋はー?」
「なんか知んねーけど阿部と一緒に帰ってった!」
「一緒にというより連行された方が正しい気すっけどな」

そっかー?とけらけら笑う田島くんにじゃあ残った俺らで花火しない?と水谷くんは顔を輝かせた。

「俺は良いぜー」
「俺も俺も!」
「お前は?行く?」

浜田くん田島くん、次々とメンバーが決まっていく中ふと後ろにいた泉くんに声をかけられる。
今日は美術部休みだし、せっかく水谷くんも誘ってくれたし行こうかな…。

「お言葉に甘えて行こうかな」
「ん、水谷ー!二人追加ー!」
「おっけー!」
「俺らも行こうぜ」
「あ、うん」

水谷くんの元気な返事に続いてみんなが教室を出ていく中、自然に腕を引かれどきんと胸が鳴った。
うわ、どうしよう、すごく恥ずかしい…ドキドキする。
けど泉くんは意識してやってる訳じゃないし落ち着けわたし、と何度も何度も頭の中で繰り返す。
そうしてたどり着いた近くの公園で水谷くんは持っていた花火をどさっとばらまいた。

「うおー!これ面白そー!」
「田島それ手持ちじゃねぇよ!!」

ぎゃいぎゃいと賑やかに夜の公園が花火の光で染まってく姿は楽しいのは勿論とても綺麗で、今ならすごくいい絵が描けそうな気がした。

「花火やんねーの?」
「あっそうだ」
「何しにきたんだよ。ほら、もうこれしか残ってねーけど」

くすりと笑って泉くんは2つ、線香花火を持ってきてくれた。

「ありがとう」
「やっぱ女子ってこーゆーの好きなんだな」
「え?」
「お前嬉しそうだから」

顔、にやけてんぞと頬をつつかれた瞬間体中の熱が顔に集まって、思わずうつむいてしまった。

「火、つけんぞ」
「う、ん」

何でだろう、向こうはとっても華やかで賑やかなのにまるで正反対に暗くて静かな中で仄かな光を放つ線香花火の方がわたしには何倍も魅力的に見えた。
それはきっと、となりに泉くんがいるからなのかな。
そんな事考えてるうちに線香花火はどんどん輝いて、それから光を失っていく。

「あ、花火がもう…」
「落ちねえよ」

落ちそうな花火に寂しい思いが沸いたとき、泉くんはそういって自分の線香花火とわたしの線香花火をくっつけた。

同時に感じたやわらかい唇の感触。
灯りから伸びた影が重なって離れたとき、泉くんの頬は少し熱を帯びていて、けれどその真剣な眼差しに目が離せなかった。

「お前のこと好き」
「…」
「俺と付き合って…ください」

最後のほうはごにょごにょしててうまく聞き取れなかったけれどわたしは赤い顔のまま大きくうなずいた。


線香花火
(泉が羨ましいなあ)
(お?何々?)
(田島は花火しようなー!)



⌒⌒⌒⌒
120716
泉夢…美術部なんて素敵かなと思って書いてみました
初々しいのが書きたかったんだよ!!