前方不注意だとか、注意散漫とは良く言われるけれど、こんな形でそれを思い知らされるとはまさか思っていなかった。
赤く晴れ上がった足首を見てジンジンと鈍く痛むのをぐっと堪え、運悪くくじいてしまったのを悔やみきれない。わたしとした事が、今日は何時もよりぼーっとしていて、階段を一段間違えてしまった。生憎周りには放課後で誰も居ないし、どうしようかなあ何て、痛さも段々と増していくし、呑気に考えてる場合じゃないかもしれない。これは足を引きずって保健室にかここむしかないかなあとか思った時、下からとんとんとん、と小走りに人が歩いてくる音が聞こえて顔をあげた。そして見えたのは、ふわふわ頭をしたクラスメート、

「あ、りお」
「あ、ってどおしたのォ!?」

部活中なのかユニフォームを着ているりおは、へたりと座り込んだわたしを見て驚いたように近くに寄ってきた。人が来たってゆうのは嬉しいんだけれど、よりによってまさかりおだったとは。いや、別に他人から見ればそうでもないんだろうけれど、わたしから見たりおって何かこう、頼りなさげなんだよね。でもまあ背に腹は変えられないし、わたしは仕方なく今の状況をりおに説明することにした。


「えぇー?!くじいたの!?」
「うん、ちょっとぼーっとしてて」

赤く腫れた足を見て痛そォー何て呑気に言うりおに、やっぱり頼る人間違ったかなあとため息が漏れてしまう。やっぱり自力で行くしかないか、とさっきより痛む足に力を入れようとすると、それより先に体がふわりと浮いて、わたしは一瞬状況判断に遅れてしまった。


「え、ちょ、ちょっとりお?」
「オレが保健室まで連れてってあげるから!任せて」


その時のりおの顔は何時もクラスで見てるりおの顔とは少し違って、不覚にもわたしの心臓はどきりと音を立てた。


「好きな人がケガしてンのにほっとけないでしょオー!」



へなちょこヒーロー

(ケガしてちょっと良かったと、思ってしまった)



⌒⌒⌒
120730
こんなりおーは素敵だあ!