テニスの授業中、ピピーッと休憩の合図が鳴って、あたしは額についた汗をあらかじめ持参してきたタオルで拭いながら友達とベンチに腰かけた。
今日の体育は女子がテニスで男子が野球。
まあもっともらしいっちゃらしいけどこの季節に短パンはいてボールを打ち返すのはまだまだ寒い。
出来ればバスケとかにしてほしかったなーなんて考えていると友達が脇腹をちょちょいと小突いてきて振り返る。
「ねぇちょっと!次あんたの彼氏の番だよ!」
「は?」
何の話?とクエスチョンマークを浮かべるあたしに彼女ははぁ、とため息を吐くとグラウンドを指差しホームでバットを握る男子を見て呟いた。
「あんたの彼氏でしょ!島崎くん!」
「え、あー」
やっと理解できたあたしはバットを握る慎吾に視線を送る。
メットを深く被ったその姿は不覚にもかっこよくて、ドキリとしてしまう。
ダメだ、これじゃあたし慎吾にベタボレじゃないか、と目を押さえて再び慎吾を見た時ふいに目があった。
飛び上がる心臓に赤くなるあたしに慎吾はパチンとウインクすると勢いよくバットを振るった。
「わーお、島崎くんもやるねえ」
「あんのかっこつけが…」
「とか言いつつ赤くなってるのはどこの誰かなー」
頬をつん、と突かれてうるさいなと手を振り払うと向こうの方でも休憩の合図が鳴ったらしく汗を流した慎吾がフェンス越しに手を振ってきた。
友達に背中をドンと押されて渋々側に寄るとニヤリといつものいやらしい顔をして笑う慎吾。
「俺の活躍見た?」
「見せ付けられた、の間違いじゃない?」
「素直じゃねーなーお前」
まあそんな所も好きだけど、と笑いかけてくる慎吾にカッと頬が熱くなって馬鹿っと叩くとそのままあたしの手は慎吾の手にぎゅう、と握られてしまった。
「な、なに」
「なぁ、次も活躍すっからさ、応援してくれよ」
握られた手が熱い。
メットを深く被ってるせいもあるのか慎吾がいつもの何倍もかっこよく見える。
「なーあ」
「わ、わかったってば!」
恥ずかしくって握られた手を振り払うとあたしはそう返事して友達の元へ戻った。
そんなあたしを見て慎吾は満足そうに笑うとグラウンドに戻る際、一言皆に聞こえるくらいの声で叫んだ。
「ホームラン打ったらご褒美のキスな!」
スキだらけの君へ
(だってさ)
(〜〜っ!)
⌒⌒⌒
120730
慎吾さんがスキです←