ガラガラとクラスのドアを開けても勿論そこには誰も居ない訳で。部活帰り友達と一緒にファミマ寄って乾杯でもしよーか話して盛り上がっていたのに、よりによって忘れ物とか、どんだけKYよあたし。
友達に手を合わせて必死に謝った結果、結局今度全員分のお菓子を奢るとゆー事で、交渉成立。(グッバイあたしのお小遣い)今月どーやりくりしよーかなんて考えながらフラフラと机に向かっていると、カタンとすぐ近くから物音が聞こえて振り返った。

「あー榛名」
「何してんだよ」
「ん、忘れ物ー」
「コレ?」

いつのまに、机の上に座って足をブラブラさせてた気配を消すのが上手い榛名くんに、賞賛してあげたいのは山々だったけれど、それよりも彼が今手に持っているものの方に意識が向いてしまったあたしは目を丸くした。


「何で榛名があたしのノート持ってんの!?」
「落ちてたから拾ったんだよ」
「あ、そうだったの…ありがと」


なーんだ、勝手に人の机あさった訳ではなかったのね、なら一安心。意外にも心優しい榛名にお礼を言ってノートに手を伸ばせばひょいとその手は空を切った。

…榛名くん?

ニヤリと意地悪く笑うこの顔には見覚えがある。どこの漫画でもこんな顔する奴は良からぬ事を考えてるもんだ。


「何が目的?」
「別に、なんも」


からかっただけだしとケラケラ笑う榛名にかあっと熱くなるけどもう良いよバカ真面目に警戒したあたしが悪かった!
ズンズン歩み寄って引ったくってやろうと腕を伸ばした手はあっさりと捕まれ、次の瞬間に目の前にあったのは榛名の顔。

え?何が起こったのって思考停止してるあたしから閉じた瞼を開いてゆっくり離れたその顔は、いたずらが成功した子供みたく、そしてどこか悪役じみた顔でゆった。


「油断禁物」


かみついた野獣
(これはノートに感謝するしかない)



⌒⌒⌒
120730
実は待ってた榛名ストーカー疑惑←