部活の彼氏を待ちながら、夕日を眺める。何て、シチュエーション的にはすっごく良い感じに思えるけど、それがかれこれ1時間以上たつあたしにとっては、ロマンチックでもなんでもない。
着替えてくるから先校門行ってろ、と汚れた服で汗を拭いながら部室に駆け込んで行った慎吾を、広い心で待ってたあたしもこんだけ待たされたら怒りもするし、不信にも思う。
「いつまで待たせるつもりよあのあんぽんたん」
いい加減足も疲れてきたんですが、とあたしはその場にしゃがみ込む。
まるで宝石みたいに輝いて自分を染める夕日を、今日何度目かぼーっと眺めていると、ふとあたしの所だけ日が陰って。
誰が来たか何て、見なくても分かるけど。
「悪ィ、遅くなった」
「ほんとだよバカ」
いやーホント悪いって何の悪びれもなさそうな顔の慎吾を一睨みして、うんしょっと立ち上る。
あーあ、いくら暖かくなってきてもやっぱり夕方はまだ寒いね。赤くなった膝をさすりながら行こう、と先を促して歩き出した。
…ってこら慎吾さんついて来てないじゃない。
「ちょっとー…」
「なー」
今、あたしの言葉を見事に遮ったよね。うん。(こんにゃろう)立ち止まってこっちをじーっと見る慎吾に、なによって言えば、返事の代わりにちょいちょいと手招きされて。
「何なのもー」
「いーから来いって」
仕方なしに慎吾の元へ行くと、ぎゅうっと抱きしめられた。
こんな所で大胆!ってどうせ慎吾にはかんけーないから、あたしもその大きな背中に腕を回してぎゅうっと抱きしめ返す。
「あー、落ち着く」
「そんなに疲れたの?」
「まーな」
「そっか」
ぐてぇーっとだらしなくもたれ掛かる慎吾に、あははと苦笑いが漏れる。ホントに疲れてるなーこれは。
「なー」
「ん?」
今度はなーにって顔を上げたら、唇に柔らかいものが押し付けられて、あたしの思考はフリーズ。
鼻先がぶつかり合う距離で慎吾がニヤッと笑うのを合図に顔が熱くなった。
下校中の生徒があんまり居なくて良かったよ。多分、今あたし顔真っ赤。
「栄養補給は大事だろ?」
「…バカ」
そんな事言ってもするからなーと再び近づいてきた慎吾にあたしはまぶたを閉じた。
トワイライトにくちづけ
(…ねェー準サン)
(あ?)
(慎吾サンがちゅーしてる)
(はぁ!?)
⌒⌒⌒⌒
120730
慎吾はいつでもどこでもセクハラしそー