そよそよとした心地よい風が頬を撫でて、卒業式にはもってこいの天気と気温。
わたしも今日で卒業かぁ、と手の中に収まりきらない手紙やら色紙の束を見て、改めて実感する。
3年間何て本当にあっとゆう間、入学したての頃はドキドキしながら通ってたこの校舎も、今となっては名残おしい程に馴染み深い。
「先輩、」
ツンとしてきた鼻にいかんいかんと上を向いていると、ジャリ、と土を踏む音と共に目の前には見慣れた人の姿。
「準太、」
「卒業、おめでとーございます」
「ん、ありがとう」
野球部の皆ともこれでお別れだね、少し鼻声ながらに言ったら、準太は眉間に皺を寄せてそんなん何時でも会えるじゃないスかって、怒られちゃった。
でもね、それでもわたし、やっぱり少し寂しいの。グラウンドで汗をかきながら楽しそうに投げてる準太の姿見るの、結構好きだったんだよ。
「あの先輩、俺、先輩の事」
「準太、」
「…ッ」
その先は言わないでと言わんばかりに、準太の唇に指を当てる。分かってるよ、準太の言いたい事。でもね、それはわたしが先に言おうと思ってた事だから、先越さないでくれるかな?
驚いている準太ににっこり笑いかけると、かぁっと赤くなって。知ってたんスか、ってとっくにバレバレだよ。
「じゃ、返事下さい」
「言っても良いの?」
「…何でッスか」
「良い返事じゃないかもよ」
そう言うと準太は少しだけ目を丸くしたけど、すぐに先輩嘘下手くそすぎって笑われた。
うん、そうかもしれない。だってわたし今顔熱いし、きっと赤くなってるんだろうな。
「先輩、今度こそ真面目に答えてください」
まだ少し笑いが残ってる準太に小さく頷いて。わたしの答える返事は一つだけ。
ばれていた恋心
(とっても大好きです)
(…知ってました)
(わたしも)
120730