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side 眞
橙真。おまえはいつも俺に対して何処か遠慮してる。それはおまえ自身気付いていないんだろう。
俺達はいつだってお互いに何処かすれ違ってる。それはお互いに存在する境界線の思い込み。
だから俺は……
「そうなんだよー。だからこれは俺の心の引き出しにこっそりしまっとくつもりなんだけどさ」
「なんだそれ」
苦笑しながら笑いかけてくれる橙真。ねぇ、気付いてよ橙真。俺は白井さんじゃなくておまえが好きなんだよ。
「だから俺を慰めてー」
一瞬きょとんとしてまた無表情に戻る橙真。きょとんとした顔も可愛いなぁ。
「アホか」
やっぱそうなるか。ここで橙真が『仕方ないなぁ』って言って腕を広げてくれたら俺は死んでもいいくらい嬉しいのに。
「なんだよー。橙真のケチ野郎。いいじゃんかちくしょー」
自分で言っててなんだけどガキか俺は。
「てかほんとにいいのか? 白井さんのことそんなにすぐ諦めて……」
あーあ。橙真の馬鹿野郎。俺は白井さんじゃなくて橙真のことが好きなのになんで気付いてくれないんだよ。
「……気付けよ馬鹿」
「ん? 何か言ったか?」
小さくいった俺の言葉は橙真に届かず消えていく。
聞いて貰うために言ったわけじゃないけど、それでも聞こえなくて良かったって気持ちと聞こえなくて残念って気持ちが交じり合う。
「だってさー仕方ないじゃん。だから俺を慰めてってばー」
「はぁ。ところで眞、おまえは今度の文化祭でやる肝試しのペア誰とやるんだ?」
深い深いため息をついた後話を変えてきた橙真。話の変え方が急だな。ま、それもそうか。
「そんなの可愛い可愛い女の子と一緒……って言いたいところだけど一緒に行ってくれる子がいないんだよー。てことで橙真。俺と一緒にペア組んでくれ」
橙真の隣は絶対譲らない。橙真の隣は俺だけのものだから。
「もう決まってるとか言わないよね? 俺をおいて誰かと行っちゃったりしないよね? てか、もう違う人と組んでるとかいったら俺、悲しくて自殺しちゃう」
返事が遅くて思わず焦ってまくし立てた俺に橙真は無表情のまま静かに口を開いた。
「いや、決まってないがおまえは白井さんを誘わなくていいのか?」
また白井さんか。
俺が仕掛けたこととはいえ、橙真の口から俺以外の人間の名前を聞くとなんだか良くない感情がどろどろに混じって俺を満たす。それが女なら余計に。
「いいの! 俺は橙真と組みたいの!!」
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