7 side修也
side 修也
俺は一生この笑顔を忘れることはないだろう。
彼は風紀委員に入ることを迷っていた。俺はてっきり、彼が迷っている理由が生徒会役員に今まで色々されてきたことが原因だと思った。俺達風紀委員は生徒会と反対の組織だ。もちろん仲も良くない。だが、一般生徒は生徒会と風紀委員を同じようなものとして捉えている。それはやることが同じとかではなく憧れといったようなものでひとくくりにしている。だから生徒会の馬鹿共がしてきたようなことを俺達もするかも知れないと思っているのだと。
そう勝手に思っていた。
けれど彼は風紀に入ることは嫌ではなかったようだ。それだけでとても安心した。
それからは少し強引に話を進めたが無事彼が風紀委員に所属することになった。
もう一度思い出す。彼が「ありがとうございます」と言って顔をあげた瞬間のあの笑顔を。それは俺の記憶にいつまでも刻み残り続けることだろう。一生忘れることはないと断言できる。
それほどまでに素晴らしいものだった。
「あぁー。もうたまんないかんわいい。可愛い可愛い。ほんとに可愛い」
そんな声と共に椋が横から彼に抱きつく。
そんな光景に俺は苛付きを覚えた。ただ先輩と後輩が戯れているだけだというのに。何故だか彼が他の人に触れられるといらついた。こんな感情は初めてでどうすればいいのかよくわからない。
「こら、椋。駄目だよ。確かに水下君が可愛くて抱きつきたい気持ちもわかるけど、水下君が困ってるから離してあげな」
翼のフォローで椋の手が彼から離れると安心すると共に、翼の言葉に不安になる。
「あーかんわいい。ねぇ、雫ちゃん俺と付き合わない?」
その言葉でさらに不安が深くなる。
「え、えと……雫ちゃん? えっと、え? 付き合う??」
椋の言葉で混乱した彼を見て少し落ち着く。ああ、椋じゃないけど可愛いな。
「だから駄目だって。雫が困ってるでしょ」
椋をたしなめながらナチュラルに彼を下の名前で呼んでる翼に感心する。
「え、えと……え!? 副委員長さんまで」
その後もしきりに「え? え?」と呟いてる彼が助けを求めるようにこっちを見てきた。
「そこらへんでやめといてやれ。雫が困ってる」
「え? 委員長さんまでですか!?」
いつの間にか戻ってきていた二人と彼の混乱した姿を眺めながらこれからはこの存在を守っていこうと堅く誓った。
「僕には味方なんて……」
少しいじけたように味方がいないと呟くその姿にまた俺達は反応を示す。
「かんわいい」
「ええ。可愛いですね」
「ああ。可愛いな」
そう言いつつもそろそろののじを書き始めてしまいそうな彼に近づき頭を撫でてやった。
驚いた顔をしたあとすぐに気持ち良さそうに目を細めた彼に、胸が暖かくなる。
それからしばらく、先程から感じていたこの気持ちに気付いたのはすぐのことだった。
ーーああ。俺は彼のことが好きなんだな。あの時からずっと……。
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