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「あっ! みんな来てくれたんだな! 今行くからちょっと待っててくれ。ほら、雫も駄々こねてないでいくぞ!」
いや、普通に駄々こねてるのはおまえだし僕なんかいなくても変わんないでしょ。お迎え来たんだから早く行ってくれよ。
「いや、僕今日は用事あって......」
「なんなんですか? 大地と遊ぶことよりその用事のほうが大事なんですか?」
あぁ、もう。めんどくさいなぁ。用事ないけどもしあったとしたらそっちのほうが大事に決まってるでしょ。それに副会長は僕がいないほうが嬉しいだろ。
なんて言えるはずもなく。
「いえ。でも......」
「いいじゃんいいじゃん〜。もうその平凡君連れてきていいから早く行こうよ〜」
うわわわわ。会計の馬鹿。なに言ってんだよ。この流れ一番悪いパターンだ。もう最悪。
「そうだぞ! よしいくぞ」
そういってマリモが僕の腕を遠慮なく掴んでくる。
痛い。マジ痛い。なんでこんな馬鹿力なんだよ。チビマリモめ。
ーーマリモ信者が歩きはじめて数分後、僕達は誰かに声をかけられ足を止めた。
「おい。大河内。そこの水下雫を借りていきたい」
もう今度はだれ?
「あぁ、修也じゃん!! いつも名前で呼べって言ってるだろ!!」
修也? もう、ほんと誰?
「もう一度言う。そこにいる水下雫を借りていきたいんだが」
「なんでだよ。今から雫は俺たちと遊ぶんだ。な!!」
いや、無理矢理なんでこれから解放されるなら制裁以外のことならなんでもいいんでついていきますよ。
「こっちは仕事なんだ。はやくこっちに渡せ」
「やだ!」
「あの、大河内君。僕、行くよ。遊びは今度にしよ?」
だからはやく離してくれ。そろそろほんとに手が折れる。
「本人がそう言ってるんだからはやく離してやれ」
「えぇー。じゃあ、雫。明日一緒に飯食った後みんなと遊ぼうぜ!!」
「う、うん。わかった」
ほんとは嫌だけど。
「よし、水下雫。いくぞ」
「は、はい」
ついていくのはいいけどこの人はだれ?
親衛隊の人達じゃないみたいだけど。
どうしようどうしよう。
ほんとにこの人誰? 大丈夫かな? もしほんとは制裁で、とかだったらどうしよう。あきらかに喧嘩強そうだし僕生きて帰れるかな。
「そんなに縮こまるな。おまえになにもしないから安心しろ」
「え?」
なんだろう。この人がそう言った途端、さっきまでの雰囲気とは違ってこの人の纏う空気? オーラ? みたいなものが変わった。なんていうか温かい。
「あの、あなたは誰ですか?」
「え? ん、あぁ。知らないのか。失礼。まさか俺を知らない生徒がいるとは思わなかったからな。少しうぬぼれてたみたいだ。俺の名前は三上 修也」
三上 修也。それって......もしかして...。
ちょっとまって、嘘でしょ。この人さっき仕事って言ったよね? 僕何かしちゃったっけ?
「あ、あの、あなたはその、もしかしなくても......」
「ん? あぁ、風紀委員長をやらせてもらっている」
やっぱり。......僕ほんとになにかしちゃったっけ? もしかして大河内と仲いいと勝手に思われてそれで同類のくくりにまとめられてみたいな感じかな?
「あ、あの、僕、なにか悪いことしちゃいましたか?」
「いや、していない。俺が君を風紀室に連れて行こうとしてるのは君を守るためだ」
「まもる......ため...?」
「ああ。今まで大河内のせいで風紀が大変だったせいで君への配慮まで手がまわらなかったのが現状だった。けど、このままではまずいと思ってな。遅くなってすまなかった。辛い思いをさせた」
ああ。今まで僕は、みんな僕がいやいや付き合わされてることに気付いてもらえないって、気付いてくれてる人なんていないってそう思ってた。けど、いたんだね。
なんか、安心したからかな。温かいものが目から雫となって落ちていく。
「お、おい。大丈夫か? そうだよな。遅すぎだよな。本当にすまなかった」
僕は泣いてるから喋ることもままならなかったけど、それは違うとちゃんと伝わって欲しくてくびを横にふった。
「え?」
ちゃんと伝えなきゃ。
「違うんです。......僕、嬉しいんです。僕の...ことなんか...わかってくれる人なんていないって.....ずっと...思ってたから嬉しくて」
僕は袖で涙を拭って必死に伝えた。
途切れ途切れだったけど、ちゃんと伝わったと思う。だって委員長さんの顔が穏やかだったから。
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