crazy guys | ナノ






side 雫

翌日、僕は朝早くから風紀室に来ていた。それはもちろん僕が正式に風紀委員になったからだ。

仕事を覚えるのと風紀委員の人達との顔合わせ。それに一般生徒にわかるようにバッチを貰った。

顔合わせは緊張していた僕が拍子抜けするほどすぐに終わり、みんなとても気さくで優しい人達ばかりだった。

なんで僕は今まで、こんなにも優しい人達の存在に気付くことなく勝手に一人だと思い込んでいたのか。ばかみたいだ。

「雫? 大丈夫か?」

僕が考え事をしてぼーっとしていると、委員長さんがそれを落ち込んでると捉えたのか心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。

委員長さんと僕の会話が聞こえたのか周りの委員の人達も心配そうに僕を見てきた。

「だ、大丈夫です。ちょっと考え事してただけなので」

「なら、いいんだが」

僕の慌てたその反応に安堵したように微笑みかけてくれるみんなにとてもふわふわした気持ちになる。

みんな本当に優しい。

これらは全て、僕がここ最近ずっと欲しくて、諦めたものたち。

とても、嬉しい。

嬉しくてずっとにやけがとまらなくて顔が緩んだままでいると、委員長さんが仕事を教えると言って僕を廊下に連れ出した。

「それじゃあまずは朝の見回りからだな。……風紀は早朝から校内の見回りをしている。二人一組でペアを組み見回りをする。基本は暴力沙汰になった時対処出来るように力があるものと、いつでも書類処理や事後処理ができるように雑務が出来るもの。この二つにそれぞれ特化した二人になるように組み合わせている。雫はまだ入ったばかりだから俺と一緒にペアを組むことになっている。ここまでは大丈夫か?」

委員長さんのわかりやすい説明に僕は頷いた。

「はい。あの、このペアっていつまでとかあるんですか?」

委員長さんがペアでとても心強かったから僕はペアが変わって欲しくないなと思いながら委員長さんに質問する。

「俺と一緒は嫌だったか?」

なにを勘違いしたのか委員長さんがそんなことを聞いてくる。

僕が委員長さんをそんな煙たがるみたいなことするはずないのに。

「いえ、違います! そうじゃなくて、委員長さんとペアだったのが嬉しかったから変わるの嫌だなーと思って……」

自分で言っててその内容が恥ずかしいことに気付いて、僕の言葉は尻すぼみになって消えていく。

「あ、えっとえっと」

僕のばか。もっと他にいい言葉あっただろ。

「普通新人が入ってきた時は俺や翼、椋がそいつとペアを組み、俺達がもう大丈夫だと判断した時にペアを一旦解消して改めて組ませるんだが……」

委員長さんの説明にまだ話の途中と言うことも忘れ落ち込む。

「そう落ち込むな。まだ続きがある」

僕が落ち込んだのが一瞬で分かったのか委員長さんは励ましてくれる。

そうだ。ちゃんと話は最後まで聞かなきゃ。

「だが今は風紀委員は偶数だ。新しく役員が入ってこない限りは俺とおまえのペアが解消されることはない」

その説明に気分があがり委員長さんをみると薄らと笑みを称えていて凄くかっこいいと思った。

いつも笑わない人が笑うとかっこよく見えるみたいなあれかな。ギャップ(?)ってやつ。

まぁ委員長さんは元からかっこいいんだけどさ。

「本当ですか!」

もちろん副委員長さんも椋先輩も嫌いじゃない。むしろ大好きだ。けど、委員長さんと一緒のほうがなんでか凄く安心する。だから一緒のペアはほんとに、この上ないくらい嬉しい。

嬉しい。

声も嬉しさに伴ってまた大きくなってしまう。けど、どうしようもない。
だってこんなに嬉しいんだから。

なんでこんなに嬉しいのかわからないけど……。

この感情は一体何なんだろう……。

(9/9)

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