Riding Illusion | ナノ



何者だったんだ? 今の奴……。

まぁいいか。さて、本の続きっと。

「おい、おまえちょっとまて。そこの金髪野郎だ」

「あ、俺すか?」

「そうだ」

はぁ、またなんか始まったのか? まぁ俺には関係ないこと。

「おいおまえ。動くなっつてんのにさっきから動いてたよな? 1回ぐらいなら許せたがもう2回目だぞ? 覚悟はできてんだろうな? あ゙ぁ゙?」

うるせぇな。本に集中出来ねぇじゃねぇか。

「おいそこのおまえもだぞ? さっきから余裕な態度で本読んで。しかもそこの金髪野郎とも話してやがったよな?」

それ、俺のことか……? 俺の勘違いかと思って辺りを見渡してみるが周りは誰も本を持っていない……。
てか、そんなの完全なとばっちりじゃないか。くそっ、金髪野郎め。

「あ、それってもしかしなくても俺のことですか……?」

「あたりまえだろうが! なめてるのか?」

あ、正直言うと。

「……いえいえ、そんなこと…ないですよ。あるわけ…ないじゃないですか」

くそっ、駄目だ…。どうしても笑いが交じってそんなことないってつなげて言えない。

「くそ! その態度がムカつくんだよ!」

せっかくおだててやってんのになんだよ。

「えっと、俺なんかしました? 俺よりそこの金髪君のほうが失礼なことしてると思うんですけど……」

めんどくさいから金髪野郎に丸投げ。だってだるいじゃん?
それに元々とばっちりだし。

「そうだった、そこの金髪野郎。なにか最後に言い残すことは?」

案外このバスジャック犯まぬけっていうか馬鹿だな。俺が少し意識を金髪野郎に向けるとすぐに移って……。単純。

「最後に言い残すこと? ねぇな。だって最後じゃねぇし」

「てめぇ。ふざけるのも大概にしとけよ。俺が人を殺せないと思ったら大間違いだからな」

そういって斬りかかるテンプレモブ。

「キャァァァ!!!!!」

響き渡る女生徒の叫び声。

そして、無惨にも飛び散る赤い液体。……ではなく、気絶したテンプレモブとやたらどや顔の金髪野郎。

「………どう、なって……」

未だ状況についていけない男子生徒が呟く。それを始めとし、波紋のように広がる生徒達の声。


バスジャックも終わったか。また、普通の学校か。

………本、全然読めなかったな。




******


「みんな、大丈夫だったかい?」

俺達はその後、犯人を縄で縛って拘束し、警察に連絡した。

ま、やったのは全部金髪野郎だけどな。

「って、言われても大丈夫じゃないよね。でも安心して! 我々警察がしっかりと責任もってこの事件は請け負うからね」

そしてこの、やたらと元気な奴はこの事件にまわされた新米の警官だ。

一応上に立つ者として下の人間の顔などは一通り把握しているから間違いは……ない……はず。

まぁ、むこうは俺のことを知らないだろうけど。

名前は確か……義元 正気(ぎげん まさき)だった気がする。

「僕は○○警察署の義元 正気です。よろしくお願いします。皆さんさっき怖い目にあったばっかで悪いと思うんですけどお話を伺ってもいいですか?」

ほら、名前あってる。だってこいつの名前、言い換えれば『元気』と『正義』になるから変な名前だと思って覚えてたし。

けっして、それが理由でたまたま覚えていたわけではない…。

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