Riding Illusion | ナノ



俺はいつも通りに学校へ行った。いや、いくはずだった。それはもう、普通に。

だが、何故か状況は普通じゃなくなっていた。

「てめーら!! 少しでも動いたらどうなるかわかってるだろうな!」

はぁ、なんだこのテンプレなモブい奴は……。

そう、俺は普通に学校へ行くためにスクールバスに乗った。……はず。

なのに今の現状はなんだ? なんでこんなテンプレモブがいる。あきらかにおまえ学生じゃねぇだろ。しかも、なんでおまえは手に鋭く光る銀色の物体なんか握ってる? そして、なんでバスは動かない。バスが動かなきゃ学校へいけねぇじゃねぇかよ。

「う、動くなよ(人)」

いや、動いてくれ(バス)。じゃないと学校に行けない。

てかなんでこんな時間にバスジャックがおきるんだよ。まだ朝の7:40だぞ?

ふざけんなよ。わざわざ人が少ないこの時間狙いやがって。俺の睡眠時間返せ。

「動いたらこいつを殺すぞ!」

はぁ、全くもって不愉快だ。

仕方ない。これで学校に行かなくてすむと考えてこのバスジャックも楽しむとするか。

「おい、運転手」

「は、はい。なんでしょうか」

あーあ。運転手震えちゃってるよ。かわいそうに。ご愁傷様っと。

「バスを動かせ」

え? バス動かしてくれんの? おまえ……意外といいやつだったんだな。

「何処にでしょうか?」

「何処でもいい。とにかく動かせ。でも、間違っても変な気は起こすなよ? 警察でも行ってみろ、その時おまえの命はないと思えよ」

あ、やっぱり学校へは行ってくれないのか。

「てめーら学生は静かにしてろよ。妙なことしやがったらどうなるかわかってるよな?」

てことは何しててもいいわけだ。

じゃあ本読もうかな。たしかこの前買ってまだ読みきれてないやつがあった気がする。結構おもしろかったし。



*****



「なぁ、おまえ。名前なに?」

誰だよ。読書中だったのに…。
しばらく本を読むことに耽っていると聞き覚えのない声が耳に届いた。
明らかに俺に対して向けられている声に反応しないわけにもいかず、しぶしぶ本から顔をあげる。

「あんた誰?」

確認すると目の前に金髪に金色の目をしたイケメンがいた。でも俺、こんな男知らないぞ。

「俺か? 俺、今日から転校してくる神木 望ってんだ。以後よろしく。んで、おまえの名前は?」

なんだこの、やたらとフレンドリーな奴は……。

「俺は冷泉 真」

「そっか、真か...。よろしくな。ところでおまえ、なんでそんな余裕なの?」

この状況下なのに能天気な野郎だな。俺が余裕だったらこの状況で話しかけてくるおまえは異常だろ。

「余裕? なにがだ?」

「いや、だって普通こんな状況じゃ怖くて本なんか読めないだろ。てかまず、本を読むっていう思考までたどりつかない」

「それ言ったらおまえもそうだろ。おまえだってこの状況下で普通に俺と話してるじゃないか。おまえも余裕があるように俺には見えるが?」

おかしい……。

「まあ確かに、怖くはないな」

この男には隙がない。

「なら誰がなにやっててもいいだろ」

普通、そんなことを一般の学生ができるはずない。おかしい……。

「それもそうだな。読書中邪魔して悪かったな。んじゃ」

こいつは本当に何者だ?

「……ああ」

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