2 sideout
side out
授業が始まりすぐに眠りについた青年に、担当の教師はまたかと軽くため息を吐いたが、それ以上はなにをいうでもなく授業を続けた。
彼はこの学園の転入生であり、この学園はそこらの学校よりも頭の良い子息が通うような場所である。
転入試験とは、初めから居る生徒達が受ける入学試験とは全く異なり、定期試験とは似てもにつかないほどの難問が続くとても難易度の高い試験である。解くことは本当に頭の良いひと握りの者でないとまず解けない。
逆に言えばこの転入試験をパスしてしまえばその時点で全てが約束されるが、そこまで行くことが難しいようなレベルの高いテストだった。
彼が授業中に寝ていても教師達はため息を吐きつつも何も言わないのはそれが一番の理由であった。
勉強もせずにいつも満点を叩きだしているのは何故か。それが教師にはわからなかった。
なにも彼が本当の天才というわけではない。なぜなら彼は一度見ただけで覚え、一度覚えたことは絶対に忘れない脳の持ち主だったから。彼は幼い頃から異能の力を持っていた。
自身ではそれの影響ではないかと考えてはいたが、結局のところ彼自身よくわかっていなかった。
*
学校でお馴染みのチャイムが鳴り響く。
その途端、生徒達が仲の良い者達で集まり一斉に群れをなして教室から出ていく。こころなしか足取りも速く少し浮かれ気味なのが見て取れる。
しかしそれもそのはず。さっきまで受けていた古典の授業は4限目の授業であり、現在の時間はお昼休憩の時間だからだ。しかも古典の授業はこの学園では珍しくはげつるのおじいさん先生で、お経のように眠たくなる授業をする先生であった。そのぶんお昼休憩で浮ついた気持ちになるのだろう。
「なぁー」
昼休憩になってもぼーっと座っていた凜に話しかけたのは期待を裏切らず桐谷であった。
「なにー?」
「一緒に食おうぜ!」
「いいけどー。何処で食べんのー?」
この二人、いつも一緒に食べてはいるが場所が決まっているわけではない。教室で食べたり屋上で食べたり、時には食堂で食べたり。色んな場所でその日の気分で場所を決めている。
「んー、そうだなぁ。じゃあ今日は屋上で食おうぜ」
「りょーかい」
「んじゃ行こうぜ!」
桐谷を先頭に教室を出ていく二人。
普通の学園よりも豪華な造りをしているその廊下を静かに歩き、階段をつたい登っていく。
歩く度に見られる数々の視線。もっとも、凜はもちろん桐谷もなかなかの美形なので見られるのには慣れているため、さほど二人は気にはしていなかった。
しかし凛は、そんな視線を自分が転校生だからと勘違いしていたが……。
視線をくぐり抜けていくと、4階からは人気がなく無人になった、屋上に続く階段をひたすら登っていく。
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