凍える指先に白い息を吐く。ほんの一瞬温まるそれを擦り合わせながら暮れていく空を見上げた。

生臭い風が吹き抜ける荒野にはわたしと晋助しかいない。皆がそれぞれの道を歩み始めて、最後に残ったのがわたしたち。仲間か敵かもわからない死体が転がるのを避けもせず、あてもなく歩みを進める。


生き残った数少ない仲間たちは、それぞれが絶望を背負ってそれでも前だけを向いて歩き出した。でもわたしたちは違う。絶望を恨みに変えて、未来を復讐に捧げて、希望ではなく死体を踏みしめている。



「寒いね、晋助」

「あァ」

「今、何月何日の何曜日なんだろう」

「冬真っ盛りなのは確かだろォな」

「そうだね」




カチャカチャと音を鳴らして揺れる二本の剣。どちらももう血で錆びてしまっているだろう。他のものより太刀が長いから、重い。そして何より、たくさんの血を浴びて吸って、さらに重い。こんなもの、いっそ捨ててしまえたらいいのに。でもそれが出来ないから、わたしたちは今ふたり、あてもなくさまよっているのだ。




「きっと先生、泣いてるだろうな」




わたしの呟きに晋助は何も答えず、ただ足を動かしている。わたしはその背中をただ見つめた。今までだってそうやって生きてきた。だからこうして今も彼の後ろを着いて行く。辰馬や銀時や小太郎からの誘いを断ってでも、わたしは晋助だけを選んできた。それはこれからも。




「ね、晋助」

「なんだ」

「この世界まるごと、壊しちゃおうか」

ふと歩みを止めた彼は振り返り、右目だけを優しく細めて、笑った。




「お前が望むなら、やってやらァ」




何故わたしを連れるのか、何故わたしの望みを聞くのか、何故そんなにも優しい目と声をわたしに向けるのか。その答えをわたしは知っている。それは彼も同じだろう。互いの思いを言葉の外側で分かり合っているくせに、まるで知らないという振りをして、わたしたちは傷を舐め合うのだ。




知らない振りに慣れすぎた




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