シャワーを浴びて火照った身体を冷ますために扇風機の真ん前を陣取る。


部活終わり、真太郎と遠回りしながらコンビニでアイスを買って、公園のベンチに腰掛けて食べ、家まで送ってもらい帰宅した。すぐに作り置きされた夕食を平らげ、課題を済ませて、弟が用意してくれた短冊に願いを書いて笹に結びつけた。

今年の願い事は、去年と同様「家族安泰」と、もう1つ、「みんなでたくさん笑い合えますように」だ。



天気予報では明日は曇りだと言っていた。織り姫と彦星は、一年に一度の再会を果たせるだろうか。そんなことを思いながら、扇風機から離れて明日の準備をする。



タオル、着替え、ファイル、ノート、筆記用具、その他もろもろを鞄に詰める。それから、緑色の包装紙に包まれた明日の主役も。


23時50分。スマホを片手にカウントダウン。フライングしちゃったけど、やっぱり日付が変わったらまたちゃんとおめでとうを言いたくて。ついさっきまで一緒に居たのにね、もう声が聴きたいなんて、わたしも重傷だなあ。


よくよく考えれば、わたしが彼と出会ったのは中学1年生のとき。付きあい始めたのは、中学2年生の春。そして今、高校1年生だから、これが4回目の彼の誕生日。毎年プレゼントには、部活用のタオルと、何か毎年違うものを添えて。今年はタオルと、キラキラ光るエメラルドグリーンの華奢なストラップにした。実はこれ、自分用に色違いも買ってある。



23時58分。ああ、あと2分だ。着信履歴から彼の名前を探し、あとは発信ボタンをタップするだけだ。どきどき、する。


23時59分。指がまたフライングしちゃいそうで、なんとかそれを制止した。あ、どうしよう、緊張する…。



部屋の電波時計が23時59分30秒を表示したのを確認した瞬間、手に持っていたスマホが突然震えた。この曲は、



「も、もしもし!」

「俺だ」

「どうしたの、真太郎」

「お前に言いたいことがあるのだよ」

「言いたい、こと?」

「ああ、」

電波時計が、0時0分00秒を表示した。

「しんたろ、」

「名前」

「あ、」

「これからも俺の側にいて、俺を支えてくれ。俺もお前を一生守れるくらい、成長するから」

「真太郎…」

「好きだ」

「うん、うん、誕生日おめでとう、真太郎。大好きだよ」




7月7日。大好きな貴方よ、織り姫と彦星のように遠く離れてしまわぬよう、力強く繋ぎとめて離さないでね。








Happy Birthday
緑間真太郎
(2012.7.7)