幸村精市


まだ寒さが抜けきらない初春。わたしは先日卒業式を迎えた。立海大付属中テニス部のマネージャーとして過ごした3年間にはたくさんの思い出が詰まっている。泣きながら見送ってくれた赤也に次の部長を託して、わたしたち3年生は卒業した。


といっても、立海大付属はエスカレーター式だ。卒業してもまた4月から同じメンバーと高校生活を始める。春休みに入ってからも赤也の様子を見に行く名目で中学テニス部に入り浸っている。






「赤也の部長姿もなかなか様になってきたね。元部長としてどう?」

「そうだね、まあ大分マシになってきたんじゃない」

「あはは、厳しいね」




今日もみんなでテニス部に押しかけて汗を流してきた。わたしも後輩マネージャーに指導したり恋バナをしたり。日が沈んで精市の一声で締められた今日の部活(あれ、赤也じゃないの?って今気づいた) 。今日もあっという間に時間は過ぎていった。



「夕焼け小焼けで日が暮れて〜」

「ふふ、ご機嫌だね」

「うん! 今日も楽しかった!!」

「ねえ、名前」

「ん? なーに?」

「中学、楽しかったね」

「うん! 辛いこともあったけど、その倍の倍楽しかった!」

「そうだね」



遠回りして帰ろう、そう言われてなんとなく海沿いまでやってきた。波の音が心地よくて、疲れなんて一瞬で消えてしまった。大きな夕陽が少しずつ海の中へ消えていく。今日も1日ありがとう。



「名前。あの夕陽が沈んでしまったら、君に伝えたいことがあるんだ」

「伝えたい、こと?」

「ああ、だから夕陽から目を離さないで」

「う、うん」



ゆっくりとゆっくりと、海に溶けていく夕陽。それはあまりにも神秘的で美しい。今までの3年間の思い出が蘇って、少しだけ切なくなる。そして完全に夕陽は姿を消した。



そっと右手を捕まれ精市の顔を伺うと、茜色を反射してそれはそれは綺麗に微笑んでいた。






「名前が好きだ。付き合ってください」



その言葉は、明日わたしが彼に告げようとしていた言葉だった。






フライングゲット


これからはもっと近くで、あなたを支えるからね。1日早いけど、誕生日おめでとう。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -