恋に焼かれる


「あっつー…」


初夏。間もなくやってくる梅雨を前に、連日暑い日が続いている。

授業が終わってすぐ自販機で購入した紙パックのカフェオレは、この暑さでもう既に空っぽだ。ストローをくわえてブラブラさせながらぼおっとグラウンドを眺める。野球部が早速走り込みを始めていて、よくやるなあなんて思いながらも、わたしもそろそろ部活に行かなくちゃと頭の隅で考える。紙パックを掃除用具箱の隣にある青いゴミ箱めがけてフリースロー。カコンと小気味良い音を立てて見事入ったそれ。まあ当然なのだよ。

荷物を持ち、忘れ物がないか最終確認。あっ、朝真太郎に貰った犬のぬいぐるみ(今日のわたしのラッキーアイテムらしい)をロッカーに入れたままだ。少々大きめなそれは鞄に入らない。仕方ない、手に持っていくしかないか。明るいキャラメル色の毛並みのわんちゃんはなんだか黄瀬くんに似ていて可愛らしい。名前はきーちゃんにしよう。教室に残っているクラスメートに別れの挨拶をして体育館に向かう。



「あっ、名前っち!」

「ん? ああ、黄瀬くん」

「今から部活っスか?」

「そうだよ〜。黄瀬くんは?」

「俺もっス! でもその前に用事があって」

「用事?」

「はい! 名前っちに!」

「わ、わたし?」


目をキラキラ、しっぽもフリフリさせて(いるように見えるだけだが)いる黄瀬くん。やっぱりわんちゃんみたい。


「ってゆうか名前っち、その犬のぬいぐるみは?」

「ああ、これ? これね、真太郎がくれたの。今日のわたしのラッキーアイテムなんだって」

「へー、そうなんスか…」

「可愛いでしょ?」

「そっ、そうっスね…」

「ん? どうかした?」

「あっ、あのっ、名前っちと緑間っちって、ど、どういう関係なんスか…?」

「へっ?」

「お互い名前呼び捨てだし、仲良いし…」

「ああ、わたしと真太郎はただの幼なじみだよ」

「幼なじみ…」

「うん」

「よ、よかった…」

「え?」

「あっ、いや! なんでもないっス!」

「そう? ね、それよりわたしに用事って?」

「あっ、ああ、あの、実は俺、今日誕生日なんスよ! それで、あの、名前っちにおめでとうって言って欲しくて…!」

「そうだったんだ! うん、黄瀬くん誕生日おめでとう! 誕生日覚えておくから来年はちゃんとお祝いするね」

「ありがとう名前っち〜!」

「前もって教えてくれてたらプレゼント用意したのに。あっそうだ、ちょっと待って!」

「なんスか?」

「ジャーン! これ! 駅前にあるケーキ屋さんの男女ペア割引チケット! これあげるよ!」

「えっ、いいんスか?」

「うん、あげる。真太郎でも誘って行こうと思ってたんだけど、せっかく黄瀬くん誕生日だし。彼女と行きなよ!」

「…俺、彼女いないっスよ?」

「あ、そうなの? じゃあまあお友だちの女の子と、」

「名前っちと行きたいっス」

「え、わたし?」

「ダメっスか…?」

「ううん、いいよ!」

「じゃ、じゃあ決まりっス!」

「うん!」



初夏。太陽は黄瀬くんの綺麗な金髪をさらに輝かせて、わたしは少し眩暈がした。今週の土曜日、夕焼けに輝くそれに同じように目を焼かれるのは、また別のお話。




恋に焼かれる
そんな予兆を確かに感じた










黄瀬くん誕生日おめでとう!
アニメからハマり今原作読んでいるんですが、最近は黒バスにどっぷりです。これから黒バスのお話も増やしていきたいと思っております。やべぇ黒バスやべぇ…。




(2012.6.18)

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