となり
大学生パロ
今わたしは、大きな建物の中の、大きな部屋のひとつで、静まりかえったたくさんの人の中に紛れて、少し心臓を早く動かしている。
ノートを取ることに集中したいのに、出来ない。させてもらえない。相手の細かな動きを感じるくらい、近くに感じる存在。ああもう、頭が痛い。
「ぼけっとしてねェで、ちゃんと講義受けなせェ」
「…わかってるわよ」
「にしても、この講義面白くねェ」
何故他学部所属の彼が、わたしの学科の講義を受けているのか。わたしにもよくわからない。
「なぁ、お前にはこれ、面白えのか?」
「いいや、つまんない」
「ふーん」
隣に居る彼は、うちの大学でも特にイケメンだって有名な人。その有名人とわたしは、まあ腐れ縁というか。中学生の頃からの付き合いなわけで。
「腹減った。なんか食いもん寄越せ」
「ないわよ」
「ちぇー。早く終わんねェかな」
「あと30分じゃん」
「なぁ、メシどこで食う?」
「なんで一緒に食べる流れになってるの」
「日替わりランチ何かなァ」
「はぁ」
いつもいつも、こいつには振り回される。でもそれもいいかな、なんて思ってしまうのは、惚れた弱みというやつか。よくわからない言葉が羅列された黒板を、ぼおっと眺める。よくわからないことばかりだ。講義も、隣の男も。
最近買ったばかりの筆箱に小さく折り畳まれた紙が投げ込まれる。
「早く読め」
「はいはい」
いたずら好きの彼のことだ。どうせくだらないことを書いているんだろう。そう、思っていた。
ーーーずっと前から、お前のことが
ここまで読んで、一旦閉じた。
「は? は?」
「お前全部読んでねェだろ」
「ん、んん、これは後から、」
「いま、よめ」
「はい…」
とりあえず、死にそうになりながら読んだら、彼はわたしのことが好きらしいということがわかった。
「嘘でしょ…」
「嘘のほうがいいのかィ?」
「や、やだ」
「よろしい」