片想いの法則


昼休み。学校に住み着いている黒猫にキャットフードと牛乳を与える。購買の自販機で買った小さな牛乳パック。冬なのにつめたいものしかなくて、買ってから教室の日向で常温に戻してから飲ませている。そしてわたしはその隣でお弁当を食べながら、ぼおっと様子を眺める。


体育館裏。いくら昼だといっても寒い。制服の上に厚手のカーディガンを羽織り、ほっかいろとあったかい緑茶を携えて冷たいお弁当をつつく。別に友達が居ないわけではない。夏から懐かれたこの猫のために仕方なく、だ。



「おい」

「…晋助」

「んな寒いのによくやるな」

「ん…」



鼻の頭を赤くして、寒そうに肩を上げている晋助。学ランと赤いシャツの間にベージュのカーディガンを着込んでいる。その姿が、わたしの横で身体を小さくして牛乳を舐めている黒猫にそっくりで、なんだか可笑しい。




「今日もパン?」

「んー」

「不健康」

「じゃあ俺の分も弁当作れよ」

「…作った」

「は?」

「…ん」



切れ長の瞳を大きく見開いてわたしの突き出した巾着袋を見つめる彼。常々わたしに弁当作って来いっていうから作って来たのになんなんだこの反応は。




「何、いらないの?」

「い、いる! 食う!」

「はい」

「お、おう」




目をキラキラさせながらわたしの作ったお弁当を広げる晋助に、ちょっと嬉しくなりながら黒猫を撫でる。夏、この場所で出会ったこの子を今まで世話してきたのは、わたしの好きな彼に似ていたからだ。気持ちよさそうに頬を寄せてくるこの黒猫と、嬉しそうに卵焼きを頬張る彼には、秘密だけど。



片想いの法則
春まで温めるから待ってて




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