シャリンシャリン
儚く綺麗な簪が揺れる

幼い頃、誕生日に松陽先生がくれたこの簪。今まで大切に大切に扱ってきたから、10年以上たった今でもあの頃と変わらない輝きを見せている。昔は嬉しくて毎日付けていたけど、松陽先生がいなくなってからは大切な日だけ付けるようにしている。



そう、今日は大切な日。
松陽先生の命日だ。



わたしは攘夷戦争の後からずっと、歌舞伎町で暮らしている。身よりもお金もなく、さ迷っていたわたしを拾ってくれたのは、真選組だった。それからわたしは真選組の女中として生きてきた。もちろん、身元は偽って。



「おい、名前」

「はい、何でしょう」

「その簪、綺麗だな」

「そうでしょう?」

「似合ってる」

「ありがとうございます」




大切な仲間を裏切ってのうのうと生きている。銀時にはたまに会うことがある。小太郎は今では穏健派らしい。噂はよく聴く。辰馬については銀時から話を聞いたが新しい仲間と元気にやっているようだ。晋助は過激な活動をしているらしい。もし今のわたしを晋助が見たら、裏切り者だと斬り殺されるかもしれない。





部屋の机に、朝買ってきた花を飾った。先生のお墓を参ることは出来ないけど、遠くから手を合わせる。わたしは松陽先生が願ったように育っていますか。机の引き出しから古い教科書を取り出す。もう色褪せてしまっているが、あの頃の記憶は鮮明に残っている。松陽先生のように、優しくしなやかな人になりたくて、でもやはり先生のようになるにはわたしは未熟で。いつか会える日まで、わたしは先生の教えから学び続ける。



「なあ、名前 」

「なんですか、土方さん」

「ちょっとマヨネーズ買いに行くの付き合ってくんねーか」

「いいですよ」

「悪ぃな」

「土方さん、」

「なんだ」

「手、繋いでください」

「え、あ、おぅ」

「久しぶりですね、土方さんとこうやって恋人らしいことするの」

「そうだな。最近忙しくて、その、悪かった」

「ちょっと寂しかったです。土方さん、わたしのことちっとも頼ってくれないから」

「そういうつもりじゃ…! 俺ぁいつだってお前に支えられてる。つーかそろそろ、その、土方さんってのやめろよな」

「え?」

「お前ももうすぐ、土方だろ」

「そうですね、じゃあトシって呼んじゃお」

「ああ」

「あれ、トシ顔赤いよ?」

「うっせ」



わたしは今、とても幸せです。仲間をたくさん失って、裏切って、それでもわたしは生きていく。新しい仲間と共に。世界はまだ、腐っちゃいない。大切な人と過ごす色鮮やかな毎日を、わたしは守っていく。どうか先生、これからもわたしを見守って、道を誤ったときは叱ってください。いつかあなたの元に行く日まで。







運命線上を行こう









タイトルクロエ様より

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