もうきっと潮時よ


この曖昧な関係、もうやめにしましょう。始めは互いの利益のかなった素晴らしい関係だったけど、わたしたちの天秤は偏ったまま、戻ることはない。膨れ上がった自分の思いが、彼の思いと比例することなんてあり得ないと分かっているから。



これで最後の夜にしよう。
何度目かの言い訳は心の中に留めたまま。でもきっと彼は気づいている。狡いくらい、わたしのことは全てわかってしまう男だから。そしてわかっていながらわたしを優しく抱くなんて、狡いというより、罪なんじゃないか。




「これ、頼まれてた情報」

「あァ」

「ねぇ、晋助。わたしね、もうこの世界から足を洗おうと思う」

「そうか」

「京に行こうと思うの。もう会うことはないわ。今までお世話になりました。晋助も、ほどほどになさいよ」



微笑みながら言えたあたり、わたしの気持ちにもケリが付いたようだ。晋助は終始窓の外を眺めていたから顔を拝むことは出来なかったが、むしろそれでよかった。いつだったか、かき抱かれた後の静寂に涙した夜があった。わたしは晋助にとってはただの道具でしかないのだろうけれど、あのときからわたしは、ずっと晋助を愛していた。愛しているからこそ、わたしは晋助の足枷にしかならない。


「さようなら、晋助。」


何も言わないのがわたしへの最後の優しさだと勝手に解釈して、わたしは部屋の襖と今までの関係を閉じた。




ふと香った煙の匂いがわたしの鼻孔を擽って、目頭が熱くなった。




見おさめ、小雨

闇に染まった海があなたのようで、またわたしを揺らすの






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今夜はから騒ぎ/東京事変


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