晋助と喧嘩した。理由は確かたけのこの里派かきのこの山派か、だった気がする。そうだ、わたしが昼休みにたけのこの里をもぐもぐしてたら




「は、お前もしかして、たけのこの里派なのか?」

「当たり前じゃん。断然たけのこでしょ」

「わかってねェな、お前。たけのこの里なんざきのこの山の足下にも及んじゃいねェだろ」

「何を馬鹿なことを…。きのこの山なんてただのチョコにビスケットの棒を刺してるだけ、それだけのものじゃない。それに比べてたけのこの里はサクサクとしたクッキーに絶妙な甘さのチョコがかかっていて…、まるで黄金比率ともいうべき究極の味わいなお菓子よ!」

「ふっ、まだまだだな。お前はまだわかっちゃいねェ。きのこの山はな、それ1つとして食べたり、チョコとビスケットを別々に食べたりと個人にあった食べ方を選択出来るんだよ。チョコとビスケット、それぞれ味わい深いものが重なり合う、それこそ究極のお菓子だ!」

「ふんっ、たけのこの里の美味しさを理解できないなんてまだまだ子どもね、晋助も」

「お前こそ、単純な作りの中に秘められたら味わいに気づけていないなんて残念なヤツだなァ」

「もういいわ、わたしはたけのこの里派、晋助はきのこの山派、相容れない関係なのよ」

「そうだな、お互い譲れねェみたいだしな」

「ふんっ、わたしトシのとこ行ってくる」

「なんでそこで土方なんだよ」

「トシは絶対的なたけのこの里派なの。トシと一緒に食べる」

「だめだ」

「なんでよ」

「だめだ」

「意味わかんない! たけのこの里を否定する晋助と一緒に食べても美味しくないもん」

「とにかく土方のとこには行くな」

「なんで晋助にそんなこと命令されなきゃいけないの!」

「うるせェ。お前は俺の言うこと聞いてりゃいいんだよ」

「なにそれ…。わたしは晋助の召使いじゃないんだよ! そんなこと言うなんて…、晋助なんか嫌い!!」

「…あァそうかよ。俺だってお前のことなんか嫌いだ」

「ばかばかばか、ばか晋助!!」







そうだ、一部始終思い出した。結局ばかばか連呼して逃げるようにやってきたここ、国語準備室。銀ちゃんは凄く嫌そうな顔をしたがそんなのお構いなしだ。俺今から授業だからなんたらかんたら〜、って言いながら去っていった銀ちゃんを見送り、冷蔵庫から銀ちゃんのものと思われるいちご牛乳を拝借した。




たけのこの里の箱を軽く振るとコロコロと音がした。まだいくつか残っていたたけのこの里を一粒口に含んでもぐもぐ。やっぱり美味しいな。いちご牛乳もごっくん。うん、相性バッチリだ。でもなんか切なくて、再び口に運んだたけのこの里は、なんだか少ししょっぱかった。




ガラガラ、と扉が開く音がして、やべっいちご牛乳勝手に飲んだの怒られる!、と思ったら、そこにいたのはばつの悪そうな顔をした晋助だった。






「…悪かった」





凄く悲しそうな顔をして絞り出した声は、本当に学校一の不良高杉晋助なのかと疑ってしまうくらい弱々しくて、なんだか少しおかしく思えた。





「わたしこそごめんね。嫌いなんて言ってごめんね。ほんとは大好きだよ」




そういうと、ほっとしたような、でも少し泣きそうな顔に変わって、冷血硬派高杉晋助も普通の男の子なんだなと安心した。






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