「高杉先生!」

保健室の引き戸を壊れてしまえばいいというくらいの気持ちで、もはや叩き付けるような形で開け放った。

「ンだよ、少しは静かにし

「わたし、あなたには絶望しました。先生と生徒という禁断の関係でも、先生のそばに居られたらそれでいいと思っていましたが、まさか、まさか、あなたがここまでの最低男だとは思いませんでした!信じていたのに、最低!!!」

「いや、お前、ちょ、おい」

「今までありがとうございました。少しの間だったけど、あなたのこと好きになれてよかったです。さようなら、先生」

「行くな、よせ!」

「…先生、引き止めようったってそうはいきませんよ。わたしはもう、決めたんですから。もうここには来ません。どうかお元気で。お互いいい人が見つかるといいですね」

「ね、根に持ってるのか、この前のこと。それならもう二度としないって誓うから、とにかく俺の話を聞け!」

「…け、け結婚してくれるって、言ってくれたの、あれ、嘘だったの…? わたし、もう我慢できないよ…。なんで浮気なんてするの? わたしだけじゃ足りないの? ねえ、答えて!」

「て、て、て、あああああああもうやめだやめだ!!」





「ええええ…、こっからがいいところなのに」

「なんでンなめんどくせェこと…」

「だってしりとりしようっていったらおっけーしてくれたから!」

「しりとりっつーのは単語でやンだよ、単語で!」

「そんなルールないもーん、さっきのだって立派なしりとりだもーん」

「あああくそ、お前もう昼休み終わンぞ、さっさと教室帰れ」

「なんでそんなに怒ってるのー? 楽しかったじゃん」

「もうわかったから教室帰れって…」

「ぶー、わかりましたよーだ。」



昼休み終了のチャイムが響きわたる。残念だな、もっと先生と遊びたかったな。次の授業なんだっけ、あ、現社だ。あー、ダル…



「あ、忘れてた、先生」

「ンだよ、さっさと教室

「罰ゲーム、ちゃんとやってもらいますよ」

「そのまま忘れてろよ…」

「いーえ、そんな人生都合のいいようにはいきません! 先生にはもっと人生の厳しさというものを分かってもらいたい!」

「それはお前だろ、ガキ」

「じゃ、先生、お願いします」

「学校終わってからにしろ、バカ」

「嫌、してくれなきゃ授業出ない」

「はァー、しょうがねェな、ほら」



先生の白衣に吸い込まれるように抱きつけば、ほのかな男物の香水と煙草の臭いに包まれて幸せな気持ちになる。大好きなにおいだ。少し背伸びをして先生を見つめれば唇に温かいキス。挨拶というには長いそれに、とろけそうになる。さっさと教室行けとかなんとか言ってた割に、何度も啄むように角度を変えて、愛を、確かめ、って、長くね?あれれ、せんせー、5限開始のチャイム鳴っちゃったんですけどー、せんせー。おどおどと先生の肩を叩くとやっと開放され、目をあけると、そこにはすごーく楽しそうな、そして、明らかに何かを企んでいるような、先生の顔。


「あー、5限始まっちゃったー、早くいかなきゃー、じゃ!!」


セーラー服の襟をつかまれ、うぎゃ、っと女の子らしからぬ声を上げてしまった。あ、やっべー、これはまじでやっべーわ。いやまじで、べーわ…。どっかのギャグアニメの先輩のように、わたしも絶体絶命のピンチである。


「大人をからかうとどういう目にあうか、その身体に教えこんでやるよ、名前ちゃんよォ」



耳にふーっと息を吹きかけられ脱力してしまった身体をひょいっと抱え、連行するかのごとく真っ白いカーテンの向こうの、真っ白いベッドに放り投げられた。









禁断のシエスタ




「で、名前ちゃん。体調不良で午後の授業サボって、その首の赤いのはどういうことかなー。銀さん泣いちゃうよー?」

「これには深いわけがあってデスネ…」

「高杉お前もさー、少しは見えないところにするとかさー」

「まだまだ俺も若いってことだろォよ」

「はあー…」


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